【上海スクランブル】

いたくても買えない?! 上海マイカー事情
                                        文・写真=須藤みか
                 
市中心部には、空車状況をしらせる電光掲示板が設置されるように

 開発著しい浦東に一戸建て   のマイホームと投資用マンション一軒を持ち、週末は2年前に買ったマイカーで妻と2歳の娘と郊外にドライブに出かける――。どこから見ても幸せそうなW君(29歳)が頭を抱えている。彼を悩ますのは、マイカーの駐車場問題だ。

 というのもマイカー族の急増で、駐車場のスペース不足が発生。市中心部の駐車料金が軒並み値上がりしているのだ。2年前に上海市物価局が裁定、統一価格として1時間5元だったものが、最近関係部署で料金基準の調整が行われたのを受けて、ほとんどのオフィスビルやショッピングセンターが1時間10元へと踏み切った。月極でさえ、1カ月1500〜2000元となっている。住宅地でも高騰の傾向で、1カ月400〜600元、高級マンションになると、1000〜1500元という高額駐車場も現れているという。

キャリアアップで、駐車料金も高騰

外国テレビ局も入る広播大廈。入口で空車状況がわかる

 外資系企業に勤務するW君のオフィスは市中心部にある。

 「バスや地下鉄では乗り換えもあって、それだけで一時間以上かかり、会社に着く前に疲れてしまう。タクシーに乗ろうと思っても、出勤時はつかまえにくいし、毎月の出費もかさんでしまいますよ」

 というわけで、これまでマイカー通勤をしてきた。オフィスでの駐車料金を浮かせるために、フィットネスクラブへの入会を考えていた彼は、市内にあまたあるなかからオフィス最寄りの場所を選び、涙ぐましい交渉によってクラブ専用の駐車場を無料で借りることに成功した。

 それが来月から、さらに給与待遇の良い同業他社への転職が決まった。好条件に喜んでいて、はたと気づいたのが駐車場問題だ。フィットネスクラブからは遠くなるので、これまでのようにはいかない。新しい会社は以前の会社よりも大企業で、賃貸料金が高いことで聞こえるビル内にオフィスを構える。家賃が高いなら、駐車料金も高くなるはず。正規の月極料金を払えば、せっかくアップした給与も消えてしまう。妙案はないかと、W君は策をめぐらせている。

ナンバープレート代で小型中古車が買える?

タクシー利用者が増えて、タクシーを拾うのも至難の業

 昨年起業したばかりのX氏(50歳)は、独立をきっかけに運転免許を取得した。上海郊外に客を連れて行くことの多い彼は、マイカーを使って顧客を取引先に案内し、サービスを図ろうと思った。しかし――。

 「今は、買う気にはなれませんよ。駐車料金も高いし、なにしろナンバープレート代が高すぎる。だから、仕事にどうしても必要な時だけ友人の車を借りて、一人で動く時は小回りが利くバイクを使っています」

 交通渋滞が深刻化する上海では自動車の総量をコントロールするために、ナンバープレートの毎月の発行量を制限し、競売方式をとっている。例えば3月分のマイカー用プレートの競売数は、4800枚。

目抜き通り・淮海中路の駐車料金は高い

 昨年初めに一枚の値段が3万元を超えてからは、3万5000元を推移していたが、今年2月には最高で4万53元と4万元の大台を突破し、マイカー用の競売が始まって以来最高額を記録した。最低値でも3万9600元だった。これほどの高額は他の大都市でも例がない。

 発行制限にしびれを切らした自動車販売店は、規制のすきまをぬった奥の手を考え出した。上海よりもずっと安く購入できる上海近郊都市での取得を消費者に斡旋。業界統計によれば、昨年上海で新たに増えたマイカ1台数の4分の1が上海以外の杭州や蘇州などのナンバープレートだった。しかし、今年に入ってその"奥の手"にも規制がかかり、前述のような高騰を引き起こした。ナンバープレート代が、小型のエコノミータイプの中古車が買えてしまう値段を超えてしまったのだ。

 マイカーを持ちたくても、駐車場代とナンバープレート代の高騰で手が出せない。マイカー時代の到来を迎えたはずの上海で、上海っ子の悩みはしばらく続きそうだ。