ふだんから社会情勢に関心を寄せている医者の夏陽さんは、外交部(部は日本の省庁に当たる)のホームページの「外交フォーラム」にしばしばアクセスし、中国の外交政策や国際問題について意見を書き込む。
そんな縁で昨年9月6日、外交部のパブリック・ディプロマシー・デー(大衆外交の日)の招待客の一人となった。彼のほかにも、外交に関心を持つ庶民34人が招待され、中国外交50年の歴史を記録した外交部部史展覧ホールやパスポート・ビザ発給部門、職員食堂などを見学し、職員との直接交流も行った。
長い間、「外交に小事なし」という観念のもと、外交は一貫して、国家の大事だと考えられてきた。庶民には手が届かず、神秘の感すらあった。
しかし、情報化時代の到来とグローバル化の加速により、多くの大衆が、国際問題に関心を寄せはじめた。
一方で中央政府も、民間の声に耳を傾け、大衆に深く外交を理解してほしい、外交に参与してほしいと願うようになっている。
そんな中、閉鎖的な外交の時代に幕をおろすパブリック・ディプロマシーが、次第に中国外交の積極的な選択肢になってきた。
多くの中国人が、パブリック・ディプロマシーという概念をあまり理解していない。中国がそれを推進する目的は、外交部門と大衆の連携により、大衆を導き、大衆の中国の外交政策に対する理解と支持を引き出すことにある。
中国ではすでに、その模索がはじまっている。2003年だけでも、外交部の指導者が、全国各地で20回以上の国際情勢報告を行った。
中国外交に関心を持つ大衆に、時を置かずに外交事件や政策を理解してもらうため、外交部ではさらに、オフィシャルサイトを核とするインターネットシステムを立ち上げた。一日のアクセス数が140万回に達する成果を上げている。また、国内外のメディア向けに開いている週2回の例会やブリーフィングのメカニズムも、ますます整備されてきた。
今年1月19日からは、外交オオ案館で1949〜55年の外交文書を閲覧できるようになった。また3月19日には、新たに公衆外交処も成立。ここは、中国外交の開放の過程で、制度的に前進したことを表す新たな場となっている。
外交が舞台裏から表舞台に出てくることは、政府と政府間交渉のレベルに留まらず、大衆の意見をさらに重視する形に変わったことを意味する。このようなパブリック・ディプロマシーの発想は、政府と民意の双方向の良好な連携の現れである。
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