「人のめんどうを見るのは煩わしいけど、誰かボクのめんどうを見てくれないかな。今はなにもしたくないよ……」。映画の主人公・劉志のいつものグチだ。彼は北京のトレンドの最先端をいっている。彼は現在、なにもしたくはないが、街で突然ラブストーリーに出くわすことを夢想している。
そんなとき、宝貝(ベイビー)という女性が、偶然にも劉志のビデオテープを拾った。彼女はそのビデオに写っている男性に、自分が「未来」を与えるのだと確信した。なぜなら、彼女もその男性とおなじ「飛び立ちたい」という夢をもっていたから……。
この「街で出くわしたラブストーリー」が展開していく。欲望の火花がとびちり、2人の肉体と精神にかつてなかったような激情がほとばしる……。そうしたことが工事現場や海岸、バー、さらにはある身体障害者の青年「毛毛」の生活のなかにも発生し、影響していく。
映画は、幼いころから夢見がちだった少女が、日常生活のなかで自分を見失い、悩みながらも成長していくさまを描いている。
2人の男性に相次いで出会うのだが、1人は暮らしに自信を失い、心を煩っていた。もう1人は足が不自由だったが、その信念は変わらなかった。宝貝は、2人の男性との恋愛で自分を充実させたが、それは苦痛の種も探しだした。そして最後に、ほんとうの愛を見つけるのである。
李少紅は映画ファンにもっとも支持される女性監督であり、周迅はいまが「旬」の女優だ。『恋愛中的宝貝』は、その2人の輝く女性がふたたびコラボレーションした映画。
幼いラブストーリーのようにも見えるが、李少紅の着眼点は「以小求大」(小さなことに大を求める)だった。彼女は言う。「私たちが過ごしてきたこの20年間は、急変した物質文明と同じように、精神状態がある部分で砕けてしまったし、変わらざるをえなかった。もし、適宜に自分を合わせられなければ、すぐにも社会に淘汰されてしまう。精神を煩う場合もあるのです。私たちはその厳しい境遇を、生活のそれぞれの場面から実感することができるのです」と。それも李少紅の本作品における初志だろう。 監督・李少紅
出演・周迅、陳坤
テレビドラマ 『青衣』
『激情燃焼的歳月』(激情を燃やした歳月)につづき、張紀中と康紅雷がふたたび制作協力したテレビドラマ(全20回)であり、中国各地で快哉を叫ぶ声があがっている。主演の2人、徐帆と傅彪は、彼らが共演したなかで「最高の作品だ」と語っている。
『青衣』は、畢飛宇の同名中編小説を改編したもの。脚本は『激情燃焼的歳月』の陳靨だ。ストーリーは、1980年代の人気京劇俳優・筱燕秋(徐帆)が、20年来こだわりつづけた芸術生命を軸としている。また、筱燕秋とその先輩・後輩俳優との複雑な関係と感情のもつれあいを通して、京劇界の歴史的背景の変化のもとで、彼女が刻苦奮闘していくプロセスを描いている。
『青衣』で徐帆が演じた筱燕秋は、このドラマを見た人ならほとんどが賞賛している。徐帆は、みずから「もっとも成功した作品だ」と語っている。
彼女は11歳から京劇を学びはじめ、3年間学んだ「青衣」(良家の娘などを演ずる役柄)の素地が、このドラマを作るにあたっての基礎となった。いつも戯劇学校での生活を思い起こしていたという。
「演じるのはやはり大変でしたよ。筱燕秋はいつも芝居に没頭していて、生活上でも知らずうちに芝居のなかに入っているから。彼女を把握するのは難しかった。でも、そういうキャラクターを演じるのは、とてもワクワクしましたよ」と言う。
徐帆、傅彪のほかにも、スターの潘虹、夏立新、李明啓などがドラマのなかで精彩を放っている。また、京劇名優の張火丁が、本作品の京劇顧問と吹き替えの唱(うた)を担当している。徐帆、傅彪のすぐれた演技は、優秀なテレビ作品に与えられる「飛天賞」の「優秀女優賞」「優秀男優賞」にノミネートされている。
また、『激情燃焼的歳月』のプロデュースで名をなした康洪雷も、本作品により「優秀プロデュース賞」にノミネートされている。 プロデューサー・康洪雷、陳靨 出演・徐帆、傅彪、潘虹
「私は中国語でものを書くチベット族だ。運命によって、中国語とチベット語の2つのことばで長い間、放浪している。2つのことばには異なった心象風景が現れてくるし、それが見てとれる。まさしく奇異な経験なのだ」
中国工人出版社の新刊『阿バ阿来』の扉にあることばである。中国の現代作家として、阿来は中国においてきわめて知名度が高い。彼のその他の作品集と異なり、この『阿バ阿来』という小説集は、阿来の出生地・四川省阿ーモ地区をその背景として、中国語でものを書くほかの作者の「文学上の立場」とは明らかに違うものとなっている。チベット族の風物、人情が鮮明に表わされ、阿ーモの地図や観光路線図もはめこまれた独特な短編小説集となっている。その愛読者たちを、自然から心にいたる珍しい旅行へと誘ってくれるのである。(工人出版社)
図雅・著 『図雅的塗鴉』(図雅の悪筆)
インターネット(ネット)の誕生は、これまでの人々の生活ルールを大きく変えた。それぞれの表現方法が、このバーチャルな空間のなかで、任意に自由に変化していく。中国では、ネットのなかで大量に発表される文章や見解が「灌水」、水を注ぐようだと称されている。「灌水」が高まるにつれて、中国のネット文学も徐々に盛んになってきている。本書の作者・図雅は、中国ネット作品における「おじいさん級」の大先輩というべきだろう。
中国では、早期のネット・ユーザーたちは、自分のほんとうの身分をとくに隠したりはしなかった。しかし、図雅(「図鴉」というペンネームのときもあり、ニックネームは「鴉」)は例外だった。彼のほんとうの身分は、いまも謎である。人々は彼が男性であり、50年代に北京で生まれたことしか知らない。数年前、図雅は突然、ネット上から消えてしまった。彼が初めてネットに登場してから、ちょうど丸3年がたっていた。
図雅は、ネット上のわずかな「語言大師」(ことばの大御所)であった。その文章は、諧謔のなかにも豊かな味わいがあった。読者は本書のなかから、中国ネット文学の独特な味わいを感じとることができるだろう。(現代出版社)
蔡文娟・編 『活色生香―北京美食地図』
北京の美食を味わいたいと思ったら、この本を開いてみてほしい。『活色生香―北京美食地図』は、北京の街へあなたを誘い、さまざまな味を探し出してくれるだろう。
中国の首都として、北京はすでに世界の各種料理が集まる場所となっている。さまざまな地方の美食が、ここですべて見つかるのである。本書には、中国料理や西洋料理であれ、北京ならではの軽食であれ、ほぼすべての「美食処(どころ)」が、作者によって掘り起こされている。自ら味わった感覚が、あますところなく読者に紹介されているのだ。
本書最大の特徴は、その独特なマップ形式にある。12路線に分けたデザインは、特別な風格を備えている。本を手にすれば、北京各地のさまざまな美食がハッキリとわかるに違いない。(人民交通出版社)
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