[特別寄稿]

 
 
桜の木に込める鉄道労働者の平和への願い
 
                        日中平和交流21代表 政治評論家 本澤二郎

記念植樹をする筆者(右)

 何らかの形で日中交流をしたくても、多くの人が、活動資金などの事情から手をこまねいているのが実情である。そんな中、日本の労働組合として日中友好にすばらしい実績を重ねているグループを紹介しようと思う。

 日本最大の労組グループ「連合」傘下で、今も孤軍平和運動に取り組んでいる鉄道労組、JR東労組を中核とするJR総連だ。2004年4月16日、盧溝橋の中国人民抗日戦争記念館において、念願の日中平和桜が植樹された。彼らの代表と一緒に私も仲人役として参加することができた。

 私と記念館との出会いは、中国でも翻訳出版された『中国の大警告』(中国社会科学出版社)によってである。2年ほど前、関係者から記念館の歴史平和研究基金の困窮を知り、さっそく各方面に支援を呼びかけたところ、当時、日本における稀有な平和労働指導者の松崎明氏(現JR総連顧問)が応じてくれた。組合の決定を経て、昨年11月、組合員の浄財1万ドルを記念館に寄贈した。今回の平和桜の植樹は、こうした延長の一つである。

 私と松崎氏の出会いは中島源太郎元文相の側近の紹介で、かれこれ10年前のことである。すでに日本の組合は、過去を忘れたかのように右傾化していた。『連合の罪と罰』(ぴいぷる社)を執筆した理由である。彼をリーダーとするJR東労組、JR総連は沖縄、アウシュビッツの平和研修に力をいれていたことに、すっかり感動してしまった。

 戦後50年の1995年、日中平和交流 として50人を南京と盧溝橋に派遣した時、松崎氏は5人の労働者を参加させてくれた。すると翌年から東北の平頂山に大掛かりな平和研修をはじめた。日本軍が罪のない村民3000人を虐殺した地である。毎年12月は南京にもたくさんの代表を派遣し、歴史の共有につとめてもいる。彼らは組合員の募金によって希望小学校を20校も建設、子どもたちとの交流に汗をかいている。

 彼らは黙々と平和への信念から日中友好に力を尽くしているのである。彼らのような利他と無私の地道な運動を、私は他に知らない。利害打算を重視する時代に、正に一本のローソクである。私は、こうした平和労組の存在に敬意と尊敬の念を抱くものである。日本の誇りであろう。不幸にして彼らの平和運動を日本人も中国人も知らないため、あえて披瀝したものである。

 蛇足だが、私の日中友好活動は先人の巨大な負債による精神的苦痛を薄めたいとの思いと、合わせて日本のみならずアジアの平和と安定のためであって、それ以上でもそれ以下のものでもない。日中平和同盟でアジア、世界から戦争をなくしていきたい、この一点に尽きよう。鉄道員も同じ思いのはずである。彼らのために乾杯しようではないか。