弁護士の学志は、慧東とその妻・小白菜との離婚届けを手にしたばかりのころ、みずからの妻・新美も、前から不倫をしていることを知った。平穏な結婚生活と家庭への渇望に、学志はなんとか2人の関係を修復しようと考える。そして妻の新美は夫と愛人のどちらを選ぶか、当惑してしまう。また、小白菜はそのときから、学志との愛に揺れ動きはじめる。平淡な生活が一転してしまうのだ。この冬が、特別な寒さであることがわかるのであった……。
ある不倫の物語が、人間性のもっとも深い部分を掘り下げている。登場人物たちはいずれも、彼らの愛がみずからの一方的な想像と渇望であることに気づいたにすぎず、相手の愛を完全に把握することができないのである。どうしたら愛の苦境から逃れることができるのか? こうした感情のテーマ、失望感や喪失感が、やわらかく豊かな画面を通して表れてくるようだ。
冷たく、重々しい雰囲気は、中国北方の冬場における都市郊外の風景をベースにしており、人々に感動を与えるものだ。映画のなかでは、鏡を見るシーンや、ガラスの反射光などが出演者の影を鏡に映し出すシーンが多用される。一方では、川端康成が『雪国』のなかで描いた映像美が思い起こされ、もう一方では、人を感動させるような寂寥感を覚えるのである。
『冬至』は、昨年の第16回東京国際映画祭「アジアの風」部門で上映された。その後、多数の観客やメディアの好評を博した。ある日本人記者は、「この映画は、20年以上も経験のある監督の作品のようだ」と言ったそうだが、じっさい監督の謝東は1969年生まれの今年35歳。この作品が彼の処女作なのだという。(監督・謝東 出演・許亜軍、秦海雍、胡靖ハン)
テレビドラマ 『天竜八部』
北宋年間、大宋王朝は、遼と西夏の国からきた敵の脅威に直面していた。武侠界の各派閥は、或いは本国に忠誠を尽くし、或いは他族と助けあった。こうした乱世の一時期、英雄たちが輩出されたのである……。
著名な作家・金庸の武侠小説『天竜八部』を改編した、同名連続テレビドラマだ。乱世にあって蕭峰、段誉、虚竹が互いに知りあい、助けあっていく英雄の物語である。また、彼らをとりまく父の世代の恩情とうらみ、彼らと美女との愛憎が、人々に忘れがたい感動を与えるのである。
撮影スタッフは、北京の十渡、浙江省の新昌、仙居、永康、桃花島などの名勝で撮影を行った。その風景の最大ポイントといえば、雲南省の大理と麗江であろう。大理の地方政府の協力で、「天竜八部城」のセットが特別につくられたほか、スタッフたちは初めて香格里拉(シャングリラ)の奥地に分け入り、玉竜雪山、虎跳峡などの一帯でいくつもの美しいシーンを撮った。
作品には、中国の両岸三地(中国内地と香港、台湾)のスターたち、胡軍、林志穎などが主演し、鍾麗鄒、申軍誼など、今が「旬」のスターたちも出演。蕭峰を演じた胡軍は、この作品のポイントである。その外見であれ、性格であれ、胡軍その人が蕭峰にとてもよく似ている。彼の演じる英雄の気概が、ズバリそのものなのである。
武術のわざは安定していて、正確で、そして激しい。言葉は簡潔、動作はじつに力強く、視聴者の目をくぎづけにする。
またスタッフには、中国の有名な作曲家・趙季平氏を特別に迎えている。戯曲やナシ族古楽などの民族音楽を素材にし、巧みに運用した音楽を吹き込んでいる。こうした「自然の音」「太古の音」といわれる音楽が、この作品の別の意味でのポイントとなっている。(プロデューサー・周暁文 出演・胡軍、林志穎、鍾麗鄒、申軍誼)
朱家シン・著 『故宮退食録』(上、下)
朱家シン氏は、中国の有名な文物学者であり、明・清代の歴史および戯曲研究の専門家である。1945年に北京の故宮博物院で文物の鑑定・研究や陳列の仕事に携わって以来、60年あまり従事してきた。その彼が80余歳の高齢となり、書き著わしたのが『故宮退食録』だ。
本書では、中国のほうろう器や漆器、故宮の多数の文物、中国の戯曲など各分野の研究成果を10章に分けている。なかには、中国書画の名人・名作の研究分析や、映画やテレビに現れた明・清代の歴史的問題についての解答なども。このほか、梅蘭芳や楊小楼など戯曲の名人たちについても、独自の解釈を寄せている。
(北京出版社)
韓万斎・編集主幹 『中国音楽名作快読』
音楽は、音声の芸術だ。もし、文章の記述によって音楽の魅力を再現し、読者の目と耳に訴えかけようとしたら、それはとても難しいことである。しかし本書は果敢にもそれに挑んだ。
中国を代表する名曲、100曲を編集している。『高山流水』『梅花三弄』『将軍令』などの古典もあれば、『蘭花花』『走西口』『茉莉花』などの民謡もある。さらに『黄河大合唱』『卒業歌』などのよく知られたポピュラーソングもある。
これらの名作をより深く味わってもらうために、本書は作品の類型や創作年代、創作背景などの基本的知識をそれぞれ紹介している。また、作品におけるすばらしいフレーズや歌詞を分析し、簡譜(中国式の略譜)や五線譜なども付けている。読者は気軽にハミングするうち、名作の味わいを体験することができるのだ。(四川文芸出版社)
張愛玲・著 『同学少年都不賎』(学友みな貴し)
中国の著名な女流作家・張愛玲は1995年、アメリカで亡くなった。彼女のファンたちは深い悲しみに暮れていたが、その約8年後、彼女の遺作となる『同学少年都不賤』が突如として発表された。社会に大きなセンセーションと疑念を巻き起こしたのだ。
じっさい、本書はわずか2万字の未完の小説である。2人の女の子・恩娟と趙の友情とその変遷を描いている。物語は、2人が上海で再会し、ともに昔を語り合うところから始まる。恩娟はあるユダヤ人と結婚し、アメリカのワシントンへと移住したが、かたや趙の境遇は恩娟に及ばなかった。数年後に再会したとき、2人はすでに完全に異なる道を歩いていた……。
張愛玲の研究家・陳子善氏は、「この小説は、張愛玲の自伝的な性質を帯びている。未完のようにも見えるが、張愛玲の生涯と心理的なプロセスを研究する上で、疑いなく重要な価値をもっている」と語っている。 (天津人民出版社)
|