Sketch of BEIJING

 
 


水遊び
写真・文  佐渡多真子

 北海公園北の後海北岸を歩くのが好き。そこには北京の普通の生活があって、それは、子供の頃の風景にどこか似ているから。

 昔の風景を懐かしむのは、そこに楽しい記憶があるからだろうか。

 一度、母が北京を訪ねて来た時、街角の屋台や、たらいで洗濯をしている風景を見て、「ちょうど結婚して、子供たちが生まれた頃はこんなだったのよ!」と、うれしそうにはしゃいでいた。高度成長期前の我が家は裕福ではなかったが、母は母なりに、幸せなその頃を送っていたのかな、と、ほっとする思いがした。

 誰もが、昔の風景を懐かしむというわけではないだろう。そこに大切な思い出があるから、このタイムトリップを楽しめるのかもしれない。

 水遊びをしているこの坊やの目にも、楽しい何かが映っているかな?

  note
夏になると、しだれ柳の並木道がきれいな後海の北岸には、思い思いに散歩を楽しむ人が増える。

 
  profile
佐渡多真子(Tamako Sado )
 1990年、フリーカメラマンとして独立し、日本の雑誌などで活躍。95〜97年、北京大学留学。その後、北京を拠点とした撮影活動を続けている。写真集に、『幸福(シンフー)?』(集英社)、『ニーハオ!ふたごのパンダ』(ポプラ社)がある。