【上海スクランブル】

台湾風の夜市と日本的「デパ地下」が誕生
                                        文・写真=須藤みか
                 
日本的な「デバ地下」が設けられた上海久光百貨

 春節か、いやゴールデンウィークか、と開店情報がささやかれてきた「上海久光百貨」がようやく六月末にオープンした。特に待ち焦がれていたのは、上海に住む日本人とおそらく香港出身者。というのもこのデパート、香港そごうを経営するライフスタイル・インターナショナル・ホールディングズのマネジメントによるもので、日本的な「デパ地下」も誕生するという話が出ていたからだ。

 すでに進出している伊勢丹や台湾系の太平洋百貨などの地下にもスーパーはあったけれど、久光百貨の強みは直営の高級スーパーがあること。日本食品や有機野菜が販売されているだけでなく、ワインやハム・チーズなどの専門コーナーもある。また、デザート系のテナントもいくつか入居していて、女性には嬉しい。

 先に香港出身者も待ち焦がれていたと書いたのは、銅羅湾駅前にある香港そごうが香港っ子の間ですっかり定着しているから。特に「デパ地下」は大人気で、お寿司や日本製スナック菓子などのコーナーはいつも人いきれのために立ち往生するくらいだ。

 行列ができるシュークリーム店やキレイなパッケージが人気の東京の洋菓子メーカーが、この上海久光にも出店していて、日本人だけでなく、香港出身者にもお馴染み感があるというわけなのだ。

 そのほか、日本の有名パンメーカー(イートインスペースあり)や、上海で起業した日本人女性によるスイーツの店などもある。


日本人だけでなく香港出身者にも人気

上海の夜にネオンがともる「台北夜市」

 地上一階から九階建てで、営業面積は約四万平方メートル。ティファニーなどの世界ブランドのほか、上海初進出の日本のアパレルブランドや香港の若者たちに人気のセレクトショップなども多数出店しており、他の百貨店との差別化を図っている。


上海久光は「九百城市広場」にテナントとして入っており、同広場には専門店街も併設されている。場所は南京西路の静安寺横で、地下鉄二号線・静安寺駅と直結していて交通の便も良い。

 久光百貨が日本人や香港出身者にとって嬉しい存在なら、台湾出身者にとって待ちに待ったものと言えば、五月にオープンした「台北夜市」(延安西路2980号)だろう。

 市西部の台湾出身者が多く住む地区にある夜市は、長さ200メートルほどのアーケード内にある。両脇に台湾の伝統的な屋台メニューの店が七十軒ほど並ぶ。台北だけでなく新竹、桃園、高雄など地方色も豊かで、カ仔煎(カキのお好み焼き)やソセ粽(焼きチマキ)、猪血ガオ(豚の血で固めて蒸したもの)に、台南担仔麺、台湾版関東煮など。台湾出身者が経営する店が多いので、本場の味に近いものが味わえると評判だ。


ICカードで支払う先進的屋台

アンケード内に70軒もの屋台が並ぶ

 上海の小吃とは一味違うものばかりだが、なかでも臭豆腐(豆腐を発酵させて作った品)は強烈だ。アーケードに入った途端に、くさい(人によっては香ばしい?)匂いに包まれるので、臭豆腐ぎらいの人には夜市に一歩も踏み入れることができないかも知れない。

 ここの臭豆腐は、台北南部の深坑ブランド。台北で臭豆腐と言えば深坑らしいが、上海付近で食べられるものとの違いは、揚げた後に煮ていることだ。豚肉やねぎ、唐辛子、ニンニクの入った鍋で煮込むため、口に入れたとたんに濃厚なスープがジュワっと広がる。付け合わせにキャベツの泡菜(中国式ピクルス)もあるが、これくらいじゃ口休めにならないくらい、強烈な味だ。

 どの品も5〜15元(1元は約13円)程度。屋台の支払いには入口で購入するICカード(1年間有効)を使うので、小銭の準備が必要ないのもいい。檳榔や台湾食品も販売されている。営業は、夕方四時頃から深夜2時まで。

 リトル台北の趣きの夜市と、日本的デパ地下。国際色豊かな上海ならではのスポット誕生だ。