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ドキュメンタリー映画 『徳拉姆』(デラム)

 

 ドキュメンタリー映画『徳拉姆』(ダラム)は、田壮壮監督が『小城之春』に続いて再び「真心をこめた」芸術作品である。

 ドキュメンタリー映画としては中国で初めてデジタル・ハイビジョン技術を使って撮影した映画で、多くの映画関係者たちが「田壮壮の一貫した『芸術映画』路線が持続された」と評している。作品中の主人公は、いずれも生活は苦しいけれど平和に暮らす原住民たち。「徳拉姆」とは、チベット語で「平安な仙女」を意味している。

 作品は全部で10回、110分。中国語と5つの少数民族の言葉の交流が行われている。

 そこに記録されるのは、一家15人の大家族や、3世紀をまたいだ104歳のヌー族の老人、チベット地域にあって伝奇的な経歴をもつ82歳のキャラバン隊長、あらゆる求婚者を拒絶して、外の世界を夢見るチベット族の女性教師……。

 2003年4月、田壮壮監督は21人の撮影スタッフを率いて、遠く雲南省へ赴き、中国初のハイビジョン・ドキュメンタリー『徳拉姆』を撮影した。行程32日間、そのうち15日間は外の世界と完全に隔離された山岳地帯を歩いた。そしてその沿路、茶馬古道・ヌー江流域のキャラバンや、地域の原住民たちの生活を記録した。

 この作品は、そうした旅程の映像記録でもあるのだ。

 ニューヨークで行われた2004年「トライベッカ映画祭」で、『徳拉姆』は世界で初めて上映され、来賓や観客たちの高い評価を受けた。著名な映画監督、マーティン・スコセッシ氏は、この映画の「音楽と映像、穏やかな雰囲気」に深く感動し、「まるで一編の詩のような作品」「永遠の歴史的教材であり、あの地域のさまざまな文化と宗教の融合を世界に示した」と賞賛していた。(監督・田壮壮)


テレビドラマ 『塵埃落定』(塵埃が落ちた)

 

 中国中央電視台(CCTV)が先ごろ放送したテレビドラマ『塵埃落定』(25回)は、視聴者の大きな反響を呼んだ。茅盾文学賞を受賞した青年作家・阿来の同名長編小説を改編してドラマ化したもの。改編にあたっては、原作に忠実に描いたばかりか、登場人物の運命の一貫性とプロットの躍動感に重きをおき、そこに思想性と芸術性をもたせ、とりわけその観賞性を昇華させた。チベット族の豊かな風情に、淡い幻想的な色彩を散りばめたのだ。

 『塵埃落定』の主人公は1940年代、四川省阿ーモ地区を統治したチベット族の土司(当時の少数民族の族長)――マイチー家の2人の異母兄弟だ。陰険悪辣な長男と愚者のように見える賢い次男の相続権をめぐって、自分の息子である次男に目をかける母親がさまざまな策略をくわだてる。凄惨な家庭内の紛争が、ひそかにその幕を開けるのだった。

 マイチー土司は土地と権力を争うために、近隣の土司たちと闘争を起こす。解放軍部隊の西進の砲声がとどろく中、マイチー家のとりではガラガラと崩れ落ちる。ある旧社会が、ついに崩れ去ったのだ――。

 主演で次男役の李解は、かつてテレビドラマ『笑傲江湖』で重要な役どころの林平之を演じた。

 李解は今回の次男役について「マイチー家の次男は、じつは愚者のように見える人物で、人と人は平等だと考えている。彼は侍女のヅォマーを愛し、奴隷の子どもと兄弟のように接した。その他の奴隷主と比べれば、彼はとても人間的だし、彼のような人間的な処世術は、父親や兄の目にはやはり愚かだと映るのだろう」。そう、李解は語っている。(プロデューサー・閻建剛 出演・李解、劉威、宋佳、范冰冰)


『中国京劇二十講』 駱正・著

 

 中国京劇の基礎知識を普及させる読み物だ。作者は京劇の起源、発展、流派について、それをきわめて系統的に紹介している。また、その代表的な名場面を詳しく分析、読み応えのあるものとなっている。

 作者の駱正氏は、北京大学心理学部の教授で、神経心理学 A文芸心理学、情緒抑制学などの分野に造詣が深い。それらを専門に研究するとともに、中国戯曲の研究と普及に心血を注いでいる。本書においては心理学の豊かな知識を駆使して、京劇についての分析と研究を深めている。本書に豊かなオリジナリティーを与えているのだ。(広西師範大学出版社)


『五月槐花香』(アカシアの花香る5月) 鄒静之・著

 

 『五月槐花香』は、中国の有名な脚本家・鄒静之氏の最新作となる長編小説。物語は中華民国時代を背景に、北京・琉璃廠の骨董街で繰り広げられる3人の男性と2人の女性の悲喜こもごもの生涯を描く。「老北京」(旧北京)で骨董業を営む人々と、その人たちの物語が描かれており、そこにはまた興味深い文物知識も挿入される。

 小説全体には、「性格すなわち運命だ」という人々の状況が表されている。「人生の移り変わりの無常感は、私が表したかった趣旨である。『平安に古董(骨董)を蔵し、乱世に黄金を買う』というが、そうした小人物と骨董の物語から、彼らの運命の起伏を表したのだ」と鄒静之氏は語っている。(東方出版社)


『城記』 王軍・著

 

 北京は悠久の歴史をほこる古都である。社会が急速に近代化に向かってまい進するとき、この千年の古都をいかに保存し、再開発するか、それが人々の関心の的となっている。北京城の都市の変遷をしるす数多くの書物のうち、『城記』は一読するに値する良書である。

 本書は北京城にまつわる歴史のうち、数次にわたる大きな変革期をもって、それを叙述している。とくに1950年代以降、梁思成をはじめとする建築学者たちが、北京の古都を完全に保存するために惜しまぬ努力をした事実に重きをおいている。本書は彼らの知られざる物語を描くとともに、北京城における半世紀もの時間と空間を明らかにしている。 (三聯書店)