映画『自娯自楽』

 

 『自娯自楽』は第7回上海国際映画祭の開幕映画として放映され、好評を博した。

 主人公は農民の米計紅(尊竜)。同じ村の娘・如花(李鈕)に恋をするが勇気がなくて告白できない。如花は女優志望なので、映画を撮って彼女に想いを告げようと考える。彼は如花を主役の女侠にして自ら脚本・監督をする。しかし村人たちはみな侠客を演じたがり、だれも土匪の役をやりたがらない。そこで米計紅の妹は、自分が若い男性の間で影響力があるのを利用して配役を決める。このようにして、一農民である米計紅が自分で楽しむための映画撮影を開始したのだ。

 撮影が進むにつれ、米計紅と如花の距離はだんだんと縮まってくるが、土匪の役に就いた者が人から見下されるようになったり、格闘シーンが本当の戦いに発展してしまったり・・・

 この映画には、ユーモアや恋愛だけでなく、人間性の探究など様々なテーマが含まれている。監督・李欣は2世監督で、父親の李歇浦は上海映画撮影所のベテラン監督だ。かつて李欣が撮った『我血我情』は、上海映画撮影所で当年の興行収入が最高の映画だった。これにより、上海映画撮影所はハリウッド映画界へ研修生を送り出すようになった。

 第7回上海国際映画祭の「アジア新人賞」評議委員でありアメリカの著名な映画評論家のデビッド・ボードウェルは「『自娯自楽』には非常に驚かされた。農村を題材とした中国映画は以前も観たことがあるが、内容は厳かで重苦しいものが多かった。しかし『自娯自楽』はすべてが新鮮だった。ストーリーはとても面白く、登場人物の個性も豊かだ。また、中国の独特な文化や雰囲気も失われていない。非常に優秀なコメディー映画だ」と評している。

 キャストやスタッフも豪華だ。大物スター・尊竜やポップス界の女王・李鈕をはじめ、米計紅の妹・阿蓮役を演じている陶紅、夏雨も重要な役柄を演じている。また、撮影は香港撮影界の巨匠・黄岳泰、作曲はカナダの名作曲家が手がけている。(監督・李欣 出演・尊竜、李鈕、陶紅、夏雨)

テレビドラマ 『大漢天子』

 

 先ごろ、北京電視台(BTV)で放送された連続テレビドラマ『大漢天子』(全41回)は、多くの視聴者の好評を博した。

 漢の武帝・劉徹(黄暁明)が太子であったころ、祖母の竇太后(陳莎莉)は外戚家族の利を守るために、百方手をつくして太子の劉徹を追い落とし、息子の梁王に取って代わらせようとした。劉徹は風変わりな人物、東方朔(陳道明)と出会う。朔はなんども迫りくる危険を知らせ、その危機を回避した。そしてついに劉徹は皇帝の宝座に上りつめた。その後、力を発揮して内乱を抑え、匈奴に打ち勝ち、漢の王朝を最高峰の座へと向かわせるのである。

 中国の実力派俳優・陳道明は、このドラマの主演級の一人――千古の知者・東方朔を演じている。メジャーデビューを果たした黄暁明が劉徹を、台湾で「第一の美女」と称される賈静ゥがヒロインで風変わりな念奴嬌をそれぞれ演じている。また、陰謀をたくらむ竇太后に扮するのは、台湾で太后役といったらこの人の陳莎莉。波乱に満ちた多彩な歴史を背景に、大漢天子・漢の武帝の伝奇的な色彩と、ロマンあふれる青少年時代が繰り広げられる。

 1800万元を投資したこの作品は、製作中もなにかと話題を集めた。脚本は『日落紫禁城』『李自成』などを手がけた有名な劇作家・楊暁雄の力作だ。また『・脂扣』『阮玲玉』『紅テオ瑰白テオ瑰』などの映画で、国際的に名を馳せる香港の監督・関錦鵬が芸術顧問を担当している。香港の監督・梁本煕が本作品をプロデュースし、蘇越が音楽総監督に当たっている。歌手の景岡山と黄格選が、それぞれドラマの始まりと終わりのテーマソングを歌っている。(プロデューサー・梁本煕 出演・黄暁明、陳道明、賈静ブン、陳莎莉)

  
姜軍・編著 『花様年華――香港』

 

 香港には、たくさんの美称がある。「東方の珠(真珠)」「感動の都」「ショッピング天国」「美食センター」などで、おそらく誰もが一つ、二つは語ることができるだろう。しかし、美しいビクトリア湾やすばらしい現代都市を目にしたとき、あなたは本当に香港を理解したのだろうか? 香港っ子がどのように食べ、どのように遊び、どのように夜を過ごすのか、本当にわかったのだろうか?

 本書は内外の著名な作家・学者たちが、香港について書き記したもの。独特な角度で、読者をこの魅惑の都市へと誘ってくれる。香港の伝統と現代、中国と西洋、豪華と純朴などの世界を発掘しているのである。(遠方出版社)

白先勇・企画 『豎紫賣紅牡丹亭』

 

 『牡丹亭』は明代の作家・湯顕祖の名作である。杜麗娘と柳夢梅のロマンチックな愛情伝奇小説だ。優雅な崑曲をもとにして、この美しいラブストーリーを展開している。その舞台は400年来、継承されてきたものだ。そして2001年、崑曲はユネスコの第1回「人類の口承及び無形遺産の傑作」(世界無形文化遺産)に登録された。また、今年4月には、著名な作家・白先勇氏がプロデュースした崑曲『牡丹亭』「青春版」が世界公演をスタート。それはこの古典的な芸術に、青春の喜びと生命をより一層与えている。

 本書には、内外の著名人による解釈が収められている。『牡丹亭』の芸術精神を探索し、崑曲の美を発掘している。また、『牡丹亭』誕生以来の重要な歴史写真や、100枚もの「青春版」リハーサルの写真が収録されている。歴史を検証することができ、読者の目も楽しませてくれるのだ。(広西師範大学出版社)

林賢治/章徳寧・主編 『2003 文学中国』

 中国の文学界からすれば、2003年は平凡な一年だった。しかし、その平淡な中にも、豊かな創造性と新鮮味のある文学作品が多く世にでた。本書には、2003年に発表された詩歌、小説、散文などの文学作品が収められている。もし中国現代文学の最新状況を知りたければ、本書をまず手にとるとよいだろう。

 本書がとくに優れているのは、その編集委員が人気作家の崇拝をやめ、一般人の中からすばらしい創造力を発掘し、本書に収録したことだ。それによって、あまり知られない作品や、署名のない文章でさえも選出された。編集委員が相当な苦心をしたことがうかがえ、それがまた本書に特別な価値を与えている。(花城出版社)

推薦書 渡辺精一・著 『全論 諸葛孔明』

 

 諸葛孔明(諸葛亮)は、中国・三国時代の蜀国の丞相である。中国の長編小説『三国演義』は、孔明を知恵と忠臣の「化身」としており、小説や史書においては、この歴史的人物の一側面しか記されていない。しかし、この『全論 諸葛孔明』は、まったく新しい全面的かつ客観的な視点から、諸葛孔明を紹介している。

 伝統的な史書と異なり、『全論 諸葛孔明』は、孔明の生涯や足跡など基本的なデータのほかに、多数の関係資料を集めていることが、その大きな特徴だろう。その中には、孔明の記した文章、孔明に対する歴代の評価、中国と日本において孔明をテーマにした詩文作品などがある。とくに孔明への賛否両論の評価には、目を見張るようなものも多い。多くの主観・客観的な資料は、全面的な諸葛亮の研究と理解にプロットと根拠を与えてくれる。読者に自由判断の空間を提供してくれるのである。

 『三国志演義』と諸葛孔明を初めて知る人には入門書であり、熟知している人にはまったく新しい世界を開かせてくれるだろう。(講談社)