この館 この一点

西域女性の働く姿 生き生きと
新疆の彩色婦女泥俑群
 
   文=魯忠民 写真=王露 


唐代(618〜907年) 高さ9.7センチ〜16センチ


 

「彩色婦女泥俑群」は、1972年、新疆・トルファンのアスターナ古墳群で出土した。

 トルファンは中国で気温がもっとも高い地方である。また古代の西域文明の遺跡がもっとも多い地方でもある。高昌故城、交河故城、アスターナ古墳群、蘇公塔、ベゼクリクの千仏洞、カレーズ(地下水路式灌漑施設)などがそれである。

 トルファン市の東、42キロのゴビ砂漠にあるアスターナ古墳群は、古代高昌国の高昌城近くにある官民共用の墓地であり、だいたい3世紀から八世紀にかけて造られた。古墳群は東西5キロ、南北2キロの約十平方キロで、晋代、唐代の古墓が数千基ある。

 1929年から今日までに、考古学者によって十四回発掘が行われ、全部で五百基の古墓が調査された。そして文書、墓誌、絵画、泥俑や陶製、木製、金製、石製の器物、古銭幣、絹織物、綿織物、毛織物などの貴重な文物が一万点以上出土した。とりわけここから出土したミイラは、エジプトのミイラに匹敵するのである。

 中国の内地で造られた俑は陶製のものが多いが、新疆は木彫や塑像を主としている。新疆独特の自然条件から、泥は陶質のように固くなる。

 「彩色婦女泥俑群」は、右から左に、米搗き、箕による篩い、石臼ひき、餅(小麦粉をこねたもの)焼きなどの日常生活の労働に従事する当時の西域の女性たちを表現している。そこで使われている道具類はその基本的な特徴をつかんで作られている。

 また四人の働く女性は、自然な姿で、精神を集中している。俑は細部にこだわらずに作られ、本物そっくりであり、荒削りではあるが生き生きとしている。

 この古代の素晴らしい泥俑を細かく鑑賞すると、その美しさを楽しむだけでなく、その中から千年以上前に生きた西域人の生活の様子を理解することができる。

 

 
 

新疆ウイグル自治区
博物館
 


 新疆ウイグル自治区博物館は、中国の省クラスの総合的な博物館である。ウルムチ市の西北路にあり、1963年10月1日にオープンした。博物館の外観は、ウイグル風の建築様式で造られている。

 陳列室の面積は7800平方メートルあり、館内には歴史や民族の文物などが5万点以上収蔵されている。その中には1級文物が288点含まれている。

 収蔵品の中には、綾、錦、絽、紗などの絹製品や染物、刺繍など、漢代から唐代(紀元前2世紀〜紀元9世紀)にかけての多くの絹織物、毛織物、綿織物、麻織物や毛布、毛氈、打ち紐など古代の毛織物がある。

 また、漢字、ウイグル文字、サンスクリット文字、古代于聘文字、吐蕃文字、アラビア文字など多様な文字で書かれた文書や手紙があり、さらに晋〜唐代(2世紀〜9世紀)の時期に作られた木彫や塑像の俑、紙や絹に描かれた人物、花鳥の絵画もある。また、新疆の各民族の服装と工芸品もあり、こうした収蔵品が、この博物館の特色となっている。

 この他、館内には若干の古生物の化石とミイラの標本もある。

 常設の展示は3つある。第1は「新疆の少数民族の民俗展覧」で、12の少数民族の衣食住と交通、祭礼儀式、宗教などの民情や風俗を系統的に紹介している。

 第2は「新疆の歴史と出土文物展覧」で、シルクロードで発掘・収集された1000点以上の貴重な文物を展示している。

 第3は「新疆のミイラ展覧」で、ローランやハミ、チャルチャンで出土した女性ミイラが展示されている。

 現在、大規模で近代的な新疆博物館の新館が建設されていて、2年以内に完成し、オープンするとみられる。

開館:毎日9:30〜18:30(休館日なし)
写真説明:新疆ウイグル自治区博物館