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若者たちで賑わう「熔岩」
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余暇にはテニスにゴルフ、屋内スキーと各種スポーツに上海っ子の人気が集まっているが、上海でも本格的なアウトドアブームが起きつつあるようだ。アウトドアの専門ショップも市内あちこちに出来ていて、この一年だけで何軒もオープンしている。
国慶節にはトレッキングへ
国慶節の休暇を二週間後にひかえた日曜日――。上海一の目抜き通り、淮海中路から十分ほどの巨鹿路に店を構える「熔岩」を訪ねた。店内は、初めてのトレッキングに出かけるため装備一式を買いに来た若者たちで賑わっていた。
店員のアドバイスを受けながら、バックパックに、シューズやヤッケ、テント、ランプなど、基本の装備を揃えていく。2000元あれば、最低限必要なものは揃えられるのだという。
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山・行者の店内 |
「お客は男性のほうが多いと思うでしょう? そんなことはなくて、ほら、この通り、女性客のほうがどちらかと言うと多いくらいなんですよ。上海には活発で独立心の旺盛な女性が多いでしょう。だから、アウトドアスポーツも楽しんでいるようです」
経営者の一人、通称リリーさん(32歳)が言うと、「そう、そう」と20代の女性客たちがうなずく。
聞けばリリーさんは半年前まで、なんと上海の日系企業のOLだった。共同経営者は、同僚だった同世代の男性2人。残業続きでストレスの多い会社勤めをやめて、3人共通の趣味だったキャンプやトレッキングなどのアウトドア用品を提供する店を始めた。
店では月に2回、浙江省など近郊へ出かけるトレッキング・パーティーを企画している。会員はクチコミで広がり、毎回約20人が参加する。参加者は2、30代が多いが、最年長者は55歳だ。
金曜日夜に、仕事を終えた会員たちが店に集まり、一台の大型車で目的地へ向かう。日曜日に戻る二泊三日の旅は、かかった金額を人数で割る割り勘制で、一人250〜300元。そんな合理性も人気の秘密のようだ。
この日も会員たちが店に集まり、女性客たちが次回のパーティーについて話に花を咲かせていた。
「あなたも一緒に行きましょう。楽しいわよ」
女性客の一人から明るく声がかかった。
大自然を肌で感じたい
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アウトドア用品を扱う、ハードユーザー向けの「山・行者」 |
「熔岩」から歩いて十分。新楽路の古いアパートの一室に「山・行者」を開いた董建斌さん(28歳)も、趣味が高じてショップを開いた一人だ。北方出身の彼は、上海の大学に進学後、友人たちと山登りをするようになった。当時の上海にはアウトドア用品を扱う店は一軒しかなく、品揃えもそう豊富ではなかったという。仲間同士で用具を貸したり借りたりしながら山に登ったのだと、懐かしそうに話す。
1年前に店を開くまでは軍人だったという董さん。小柄ながら一見して、鍛えぬかれた頑強な肉体と精神の持ち主だと分かる。「熔岩」が初心者の女性客にも入りやすい店なら、こちらはハードユーザー向けという趣きだ。客層は男性6に対して、女性は4。
「アウトドアは北京のほうで先に盛んになったんですが、急激に発展している上海では人々が感じるストレスも大きいでしょう。大自然に触れたいと思っている人は確実に増えています」
董さんによれば、自然との触れ合いを求めてチベット自治区や新疆ウイグル自治区を一人旅するバックパッカーの存在はいまや珍しくもなく、2、30代の独身女性も少なくないのだという。
店に集まる同好の友たちに、10年のキャリアから得たアドバイスをする董さん。自分自身が山に登る時間が見つけられないほど、店は忙しく順調なようだ。
高層ビル・マンションの建築ラッシュが続き、生活がより便利に快適になるにしたがって、都会の喧騒を離れようとする人たちも増えてくる。バックパッカーを意識した旅行書専門書店も一年ほど前に開店した。
大自然を肌で感じたい――。ネイチャリング愛好者は今後ますます増えていきそうだ。
香港までゆっくり列車で
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旅行関係の専門書店 |
この夏から上海―香港間のフライトが1日26便に増え、両都市間の往来が盛んになっている。始発便、最終便を利用すれば日帰り出張さえ不可能ではない。
しかし、どんどん便利になる時代だからこそ、あえてそんな便利さを捨てて列車を利用してみるというのも一興だ。飛行機なら約2時間の距離が、列車では22時間40分。丸一日をかけて、大陸をゆっくり走る。
昨年より出国・入国審査が簡便になったこともあって、人気を呼んでいるようで、硬臥(2等寝台)席は早めの予約が必要だ。上・中・下段の3段階で、それぞれ508〜530元。軟臥(1等寝台、コンパートメント)は4人部屋なら825元、2人部屋なら1039元。チケットは2カ月前から購入可能だ。
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