●専門家インタビュー
法的保障が急がれるボランティア活動
  
 

 近年、中国のボランティア活動は、かつてない発展を遂げ、社区のサービスでも環境保護でも、貧困扶助でも、その役割を大いに発揮している。北京大学には「ボランティアと福祉研究センター」ができた。中国のボランティア活動の現状や特徴、まだ足りない点などについて、同センターの丁元竹主任に聴いた。

中国のボランティアの特徴は

北京大学ボランティア活動と福祉研究センター主任の丁元竹博士(同センター提供)

 ――まずボランティアとは何か、その概念は。

 丁主任 我々が言うボランティアは、次のいくつかの要素をもっていなければなりません。まず自ら進んで参加すること、さらに報酬を目的としていないこと、他人のために働くと同時に、社会の発展と進歩に利するということです。

 ――中国のボランティア活動はいつから始まったのですか。

 丁主任 中国のボランティアの精神と活動は1960年代中ごろに始まりました。そのときは、社会主義国家の第三世界の国家に対する国際主義の義務から出発したものです。中国はかつて、アジア・アフリカの多くの発展途上国に対し、大量の軍事面、経済面での国際援助を行いました。こうした援助活動にともなって、中国政府は、さまざまなプロジェクトに参与する多くのボランティアを海外に派遣しました。

 改革・開放後、中国最初のボランティアは、社区のサービスから始まり、一歩一歩、社区のボランティア組織に発展しました。

天津市の公安・司法のボランティアが街頭で法律相談を行った(天津・和平里新興弁事処提供)

 ――その後、ボランティア活動はどう発展したのですか。

 丁主任 この数年、中国のボランティア活動の発展は目覚しいものがあります。組織の面からみれば、主として青年ボランティア、社区ボランティア、慈善総会、中国紅十字会、香港地区のボランティア、国際組織の中国におけるボランティア活動、草の根組織の七つに分類することができます。

 現在、中国でもっとも活発で、規模や影響力がもっとも大きいのは青年ボランティアと社区のボランティアです。これはそれぞれ、共産主義青年団と民政部の系統に属しています。

 ――他の国々と比較して、中国のボランティア活動はどこが違いますか。

 丁主任 中国のボランティア活動の主要な特徴は、行政的な色彩が比較的濃いことでしょう。西側では、慈善事業やボランティア活動の多くは、宗教団体が組織していて、民間の性格がかなり目立ちます。

北京で挙行された「グリーン中国 長城を築く」のスタートの儀式で、映画俳優のジャッキー・チェン、王馥茘や漫才師の姜昆らが、昔の長城のレンガを拾い集め、残った長城を保護する活動を展開した

 中国の主要なボランティア組織は、政府や政府に準ずる機構によって創設され、その活動の大部分は政府の仕事の展開にあわせたものになっています。これは中国の歴史的伝統と現行の体制によるものです。

 次に、国外のボランティアは、資金面で豊かです。例えば米国は、経済がかなり発達していて、法律もかなり完備しています。政府は税収の中から一部の資金を社会に振り向けることができるので、多くの基金(ファンド)が成立し、これが公益事業の発展を支えています。しかし中国の企業のボランティアに対する資金援助はまだ不十分で、政府も規定を定めていません。

 法的な保障の面では、米国、ブラジル、欧州諸国はみなボランティア活動法を定めていて、ボランティアの地位や権利、義務に対する明確な規定があります。中国はこの面で、ほとんど空白です。各省の青年ボランティア協会が一部の立法の試みをし、青年ボランティア条例を公布しましたが、その実効性はあまりありません。

急がれる法的な保障

2004年の第12回「世界水の日」に、北京の水環境ボランティアたちは昆玉河に稚魚を放って市民に水の大切さを訴えた

 ――十数年、発展してきた中国のボランティアは、どのような役割を果たしていますか。

丁主任 まず、融合の役割です。社区では、人々は互助活動を通じて、社会の片隅に追いやられてしまった人たち、例えばレイオフされた人や老人たちを、再び社会に溶け込ませています。このほか、ボランティアは大きな社会的事件にかかわることによって政府の関心を引き起こし、政府の決定にさえ影響を及ぼすことが少なくありません。青海・チベット高原のホフシル事件のように、もしボランティアの介入がなかったら、政府がこの地区のチベットレイヨウなどの野生動物保護に資金を投入する事態は起こらなかったでしょう。

 同時に、多くの人々はボランティア活動への参加を通じて、社会的責任感や道徳感を強め、自分自身の能力を高めています。

 ――当面、中国のボランティア活動の問題点はどこにありますか。

 丁主任 中国のボランティア活動が直面している主要な問題は、資金の欠乏です。現在までに、政府の資金援助が得られたのは、昨年実施された大学生の西部地域へのボランティア計画だけで、その他はみな、ボランティア組織が自分で解決しています。このため大多数のボランティア組織は資金難に直面しています。ある草の根組織は、維持・継続することができず、解体してしまいました。

 同時に、ボランティアに対する社会の認識がまだ、まったく不十分です。人々の中には、ボランティアによるサービスを受けたがらない人もいます。こうしたことが、ボランティア活動が社会に広がるのを難しくしていて、ひどい場合はボランティアの積極性をくじいてしまっています。

2003年、中国で挙行された国連のボランティア養成クラス(北京大学ボランティア活動と福祉研究センター提供)

 この他、中国のボランティア活動は、法律的な環境に欠けています。非営利組織やボランティア組織の法的な地位に対して、国に明確な規定がありません。それが登録や管理の面で大きな制約となり、政府の優遇政策や奨励政策を受けることができず、ボランティア組織の発展が阻害されているのです。

 ――今後、中国のボランティア活動の前途は?

 丁主任 ボランティアは、社会や文明の進歩の指標です。もし政府が、法律の面からボランティアの地位を明確にし、一定の保障を与えるなら、中国のボランティア活動は不断に発展し、拡大して行くでしょう。