映画 『五月之恋』

 映画の主人公で台湾にいる阿磊(陳柏霖)は、音楽バンド「五月天」のボーカル・阿信の弟で、そのウェブサイトの管理をしていた。メンバーからファンへの返信メッセージを、ウェブサイトに書き込む仕事を手伝っていたが、結局メンバーに成り代わってメッセージを送り始めてしまう。そして意外にも、ハルビンにいるファンの  (劉亦菲)と知り合うのである。阿磊は少年京劇団員の俳優でもある彼女にメッセージを送り、彼女を連れて台湾の三義に「五月の雪」といわれるオオアブラギリの花を見に行くのである……。

 この映画はまた、ある物語を引き出している。台湾には、1949年に軍隊に従って大陸から撤退してきた中高年層が多くいる。彼らは大陸に生まれ、大陸に家を持ち、しかし台湾に漂着した人々だ。台湾では彼らは外省人であり、大陸では「台胞」(台湾同胞)と呼ばれている。彼らはこれまで、強い郷愁の念をずっと抱き続けてきたのだ。

 そして、大陸と台湾の若者・  と阿磊は互いに愛し合い、美しい感情を実らせていく。さらにそれが歴史的な原因で、離れ離れになった大陸・台湾三世代の肉親の情の物語へとつながっていく。映画をより重厚なものに仕上げているのだ。

 映画では、大陸と台湾における華人の暮らしと現状を描いている。「私は若い観客たちに、ある映像を提供したい。自分はいったいどこから来たのか、彼らに知ってもらいたいのだ」。映画監督の徐小明は、そう語る。

 『五月之恋』は、大陸と台湾の映画関係者の共同企画で、著名な映画監督・田壮壮と台湾の映画人・焦雄屏が加わっている。田壮壮監督は、本作品の大陸における企画とプロデュースを担当している。また台湾のアイドルスター・陳柏霖と、大陸の新人アイドル・劉亦菲が、それぞれ主役を演じている。台湾の人気バンド「五月天」が、実際の役で参加しており、映画のテーマソングを歌っている。

 田壮壮監督は台湾を訪問したとき、みずから試写を観賞し、「不思議な五月の雪、情熱あふれる五月の空、ロマンチックな五月の恋」と評したという。(監督・徐小明 出演・陳柏霖、劉亦菲)

『人生幾度秋涼』(人生幾度、秋のすがすがしい天気)

 『人生幾度秋涼』が描くのは中華民国初め、袁世凱が帝政復活させようとした茶番劇が失敗し、軍閥紛争で混乱をきわめ、人心がゆれ動いていた時期である。骨董商たちが権力に取り入るなどして命運を分けたその浮き沈みを描いている。骨董や骨董商、売り手や買い手の間には、数多くの物語がある。ドラマは一人ひとりの生き生きとした変化に富んだ運命を描き、それを通して民国初期の大衆の「百態図」を表している。さらに京劇の女形が登場するという歴史的物語を加えて、当時の流行を華やかに盛り込んでいる。中国の「国の精華」ともいえる骨董品を紹介し、当時の社会の発展過程における役人紛争の醜態や、愛国人士の何ものも恐れない強い精神を描いている。

 張鉄林、李誠儒、李立群ら一流の俳優陣が加わり、「鉄三角」という3人の強い協力をする。骨董商の波乱の人生を演じているのだ。スーチン・ガオワー、英達、劉金山なども、劇中それぞれ生彩を放っている。

 ドラマで使われた道具は、ほとんどが本物の骨董品だ。もっとも貴重な骨董が、明代の「成化闘彩鶏缸杯」「釉裏紅大瓶」「藍釉花挿」で、この宝物3点の総価格は1億元(1元は約13円)。毎回、専業の道具師2人が護送して、ドラマに「登場」させたのだという。

 骨董店の店主を演じた葛存壮は、もっとも貴重な「成化闘彩鶏缸杯」を扱った際に、この高さ6センチの小さな杯がそんなに値の張るものだとは知らなかった。手の中で引っくり返してよく眺め、「これは一体、いくらの値がつくのかね?」と聞いた。すると骨董に詳しい李誠儒が、真剣な面持ちで答えた。「葛さん、これは売り値が3000万元ですよ」。葛存壮は手を震わせて、すかさずその杯をテーブルに置いた。この回の収録後、葛存壮は速効性の漢方薬「救心丸」をひそかに飲んでいたという。(プロデューサー・陳燕民 出演・張鉄林、李誠儒、李立群)

王リン著 『回家』(家に帰る)

 広東省のカメラマン・王 が、広東、福建、江西各省の客家(はっか)居住区の長年にわたる選りすぐりの写真を、一冊の写真集にまとめたもの。それは読者に、昔のままの客家の暮らしを伝えている。静かな田園、伝統的な農耕、円形や方形の土楼、縄のあとがくっきりと刻まれた井桁、旧正月の祠堂における先祖祭りと火竜を迎える行事。そして端午節にちまきを包み、竜舟を走らせる……。

 筆者は素朴な文章で、読者に郷土愛、家族愛を思い起こさせてくれる。客家人は本来、他郷で生計を立てる伝統を持っているが、どこにいてもふるさとを懐かしみ、家族を思う。「家に帰る」――それが本書の趣旨なのである。

(中国撮影出版社)チベット自治区文学芸術界連合会
『西蔵人文地理』雑誌(隔月刊)
(チベット人文地理)

 チベット自治区には、「伏蔵」「掘蔵」と呼ばれる千年もの慣わしがある。「蔵」とは「宝庫」のことであり、「伏」とは「埋める」、「掘」とは「掘る」ことである。「伏蔵」をする者は、自分の生涯をかけて仏法を研究し、書いた経典を深山の洞窟へとしまいこむ。数百年、または千年ののちに「掘蔵」をする者がそれを掘り出し、後世に広めるのである。

 じつに不思議な慣わしである。こうしてチベットは神秘的な色彩に満ち、無数の人たちを引きつけている。先ごろ創刊された『西蔵人文地理』は、チベットの地理や文化の魅力をきわめて深く追究し、それを紹介する隔月刊の雑誌である。

 編者は毎号にわたって、読者を率いてチベットの文化的地区を訪ねている。フィールドワークを行い、その場所の自然環境や人々の暮らしについて明らかにしているのである。
 毎月号に、チベットのドキュメンタリーDVDが付いており、映像と写真、文章で、読者の目をより楽しませてくれる。

沈従文、王 ・著 『中国服飾史』

 沈従文氏は、中国近現代文学史上における有名な作家の一人だ。小説『辺城』はその代表作といえるだろう。しかし、あまり知られていないのは、沈従文氏が中国の服飾文化研究のパイオニアだということだ。本書は彼のこの分野における研究知識をまとめたもの。本書を著す際に、沈氏は大病を患っていた。そのため助手の王 氏が、口述筆記でそれをまとめた。王氏は中国の著名な文物考古学者であり、厳格に学問の道をきわめている。この2人の協力が、本書に高い学術的価値を与えている。

 中国の服飾文化は、原始社会、商、周、春秋戦国の時代から、秦、漢、隋、唐、明、清、近代に至るまで、世界が注目する明らかな特徴を持っている。本書は、文物と文献により実証するという方法で、古代服飾制度の沿革と当時の社会物質生活、意識形態の関係について、幅広く、しかも深い研究を行っている。実物を紹介する多くの写真も、本書により面白さと趣を加えている。(陝西師範大学出版社)