[表紙のひと]

大草原から世界の舞台へ 娜仁花さん

 

 ある人がかつて、娜仁花を「ポット」に喩えたことがある。見たところは静かだが、心の中ではいつも情熱を燃やしているからだ。1970年代の映画『戦地黄花』『乳飛燕』から、90年代の『黒駿馬』、また近年の『天山草原』まで、娜仁花の名前は中国で広く知られている。

 蒙古族である。モンゴル語で「娜仁花」は、「太陽の花」を意味する。小さいころは病気がちで、「大きくなったら医者になって、人々を苦しみから救ってあげたい」と思っていた。

 小学時代のある夏休みのこと。映画『戦地黄花』の撮影スタッフが内蒙古で子役を探していたが、どうしてもピッタリの子役が見つからない。そこで、ある人が彼女に試してみるようにと勧めた。天真爛漫で活発な彼女がカメラの前に立ったとたんに、監督のおメガネにかなったのだ。

 その時、両親は出かけていて、彼女は初めて自らやるべきことを決意した。「撮影スタッフについて、外の世界で映画を撮ろう」と。この時から、娜仁花の映画人生がはじまった。「私が映画を選んだんじゃない、映画が私を見つけてくれたの」と彼女はいう。

 その後、数多くの映画に主演し、さまざまな役柄を見事に演じわけている。『黒駿馬』『天山草原』で演じた2人の蒙古族の女性は、人々の心に深く沁みわたった。また、近作の映画『紙飛機』(紙飛行機)では薬物中毒の女性を熱演、日本映画祭に出品されて高い評価を受けたという。「役者として、いつもいろいろな役にチャレンジしてみたい」と意欲を燃やす。

 趣味が高じてドキュメンタリー映画の撮影も行っている。監督した『中国導演張芸謀』(中国の監督張芸謀)など多くの作品が、国内外の注目を集めている。また、アメリカのあるテレビ局の子ども向け番組にかかわっている。2歳の男の子の母親としても、「子どもが大好き。子ども向け番組を作るのも、とてもうれしいことなんです」と、明るい笑顔で話してくれた。

(写真・馮進  文・王浩)