◆あらすじ
阿霞の母親はなかなか女と手を切らない夫に愛想をつかして離婚するが、2間しかない家に暮らす母方の祖母は嫁に気を使って2人に早く出ていけと言う。母親は何よりも家持ちであることを条件に何の魅力もない子持ちのやもめ男と再婚するが、これが大変なケチで、阿霞が毎日シャワーを浴びることにいい顔をせず、水道代を払えと言い出す。生活感覚の違いはどうしようもなく母は阿霞を連れて、また実家に戻って身の置き所のない思いをする。
祖母に貰う物はきちんと貰って来いと言われた母親が別れた夫に会いにいくと、女が出国した元夫は復縁を迫る。娘のために復縁に応じようとする母に阿霞は言う。「私のために嫌なことを我慢するのはもうやめて」。結局、元夫が家を処分した金を半分貰い、母娘2人はようやく狭いながらも自分の家を持ち、のびのびと暮らすのだった。
◆見どころ
阿霞という少女がいい。物怖じせず辛辣な口を利く現代っ子ながら、人を見る目は真っ直ぐで曇りがない。感受性は強いのに決してそれを表に出さず、自分の意志をしっかり持った凛々しさ。将来はきっと自立したハンサムウーマンになるだろうと思わせて好感度抜群。この役を演じた周文ルサはその自然で存在感のある演技でフランスのナント映画祭の主演女優賞を受賞。大学受験があるからと次々に来た出演依頼を断って勉強中という話にも好感が持てる。
一方、母親を演じた呂麗ニシも相変わらず嫌になるぐらい上手い。しかも、今回は実生活でも再婚した相手の孫海英と再婚カップルを演じていて、ケチで小市民の相手にいらつくところが、2人が夫婦だと知っていると可笑しくてたまらない。いくら俳優とはいえ、よくできるなあと感心してしまう。
上海の弄堂(横町)の雰囲気や亭子間とよばれる昔ながらの建物の内部が、上海出身の監督だけにリアルに描かれているのも楽しい。
◆解説
第5世代女性監督の1人、彭小蓮がアメリカから戻って久々に撮った作品。女子高校生の作文をもとに監督ともう1人の女性脚本家がシナリオを書いたという。そのせいか、作り物でない女の本音が描けていて痛快である。母親の再婚相手を娘が「いい人って言うけど、本も読まずにテレビしか見ない俗物じゃないの」と評すると、母親が「あんたの父さんは知識も教養もあったけど、結局やったことは何?」と言い返すところなど、完璧な男(夫)などいない、もっと言えば男なんてどれもみんな同じという女たちの声が聞こえてくるようだ。
他にも、妻の機嫌を取ることしかできない情けない叔父(母親の弟)に、自分のことしか興味がない鈍重な再婚相手の息子と、ろくでもない男ばかりが出てくるのが笑える。1人、阿霞が淡い好意を抱く同級生だけは爽やかな少年に描かれているが、これも付き合ってみれば案外つまらない男の子かもしれないわよという監督と脚本家のシニカルな目を感じたのは私だけだろうか?
男性の監督の理想の女性像か妄想の産物のようなヒロイン像の多い中国映画の中にあって、久々に本当に生きた女たちが出てきた痛快な作品であった。
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