映画 『可可西里』(ココシリ:マウンテンパトロール)


 

 ココシリ(可可西里)は、中国青海・チベット高原の中心部に位置している。1985年、欧米市場で、チベットレイヨウの羊毛を使用したショールの需要が高まり、羊毛価格が急騰した。盗賊たちが次々とココシリに忍び込み、チベットレイヨウを狩猟した。これに対して、多くの動物愛護者やチベットの人々が、チベットレイヨウの保護を訴えた。

 1993年より、ココシリの周辺地域に住むチベット族や漢民族のボランティアたちが、ソナムダジェ隊長の指導のもと、「野生ヤク隊」という山地巡回保護チームを組織、野生動物の狩猟を阻止する活動を行った。野生ヤク隊と盗賊たちの血戦がくりひろげられ、ソナムダジェとザバドジェの2人の隊長があい次いで犠牲になった。

 映画『可可西里』は「野生ヤク隊」の物語を改編したもので、全編がニュース報道のようである。一人の記者が「野生ヤク隊」を取材するという筋書きで、狩猟や狩猟を阻止する物語を通して、純朴で誠実な山地巡回隊員のありのままの生活を表している。しかし、こうした飾り気のない暮らしにこそ、力強い生命力がみなぎっているのである。

 人気のない荒涼とした地域、チベットレイヨウを屠殺する場面、厳しい自然環境、凶悪な盗賊たち……。レイヨウの屠殺と保護のプロットについて、映画はまるでルポルタージュのように、いっさい手を加えない真実の姿を記録している。
 
 監督の陸川は、「ココシリは知られざる土地。そこで、まったく新しい方法を使って、この物語を展開したいと思った」という。映画には有名人が出てこないが、それもそのはず、出演者は8割方が素人で、その多くが馬やヤクの背から引っ張ってきた人々だという。(監督・陸川 出演・ドブジェ、キ亮、張磊)

テレビドラマ 『中国式離婚』

 

 作家・王海鴒の同名小説を改編したテレビドラマ『中国式離婚』(全23回)は、中国中央テレビ(CCTV)で放送されるや大きな話題となり、高視聴率を上げた人気ドラマだ。

 宋建平(陳道明)と林小楓(蒋ブン麗)の中年夫婦の結婚生活を軸として、そこに娟子と劉東北、林小楓の父母の結婚生活を添えている。現代中国の中産階層の家庭生活における不信と不穏を映しだし、現代社会のさまざまな離婚のわけと、そのプロセスを取り上げている。

 ドラマの中で離婚するか、しないかをめぐって展開したさまざまなもめごとや矛盾、当事者同士の心の動き、苦痛とやるせなさには、現代と伝統、保守と開放の葛藤がある。そうしたさまざまな矛盾が交錯して、結婚と感情とに試練を与える。社会変革が引き起こす家庭の変化を描写して、中国式の離婚の特徴を描き出したのである。

 王海鴒は『中国式離婚』で、第3者(不倫相手)のいない中年インテリの脆弱な結婚を描写した。それは結婚の異なる側面であるという。彼女は、「私もまさに中年にあたる。中年をほかの世代と比べれば、経験も希望もある」という。また、作品に表した中年の危機感が観客への警告となり、それを鏡として観客の参考にしてもらいたいと望んでいる。

 中国の演技派スターで、『囲城』『英雄』などの映画やテレビドラマで重要な役どころを演じた陳道明が、主演男優となっている。ギャラ等で決めたのではなく、自らすすんで出演契約を結んだという。それは、「この役を堪能するためだった」と彼はいう。

 主演女優・蒋ブン麗は、そのすぐれた演技によって結婚した女性の心の変化、感情の崩壊などさまざまな心理状態をたくみに演じ分けている。(プロデューサー・沈厳 出演・陳道明、蒋ブン麗、呂中)

外文出版社・編 『中国大学ガイドブック』

 

 世界で最も成長が著しい中国の教育分野の将来性に、期待が集まっている。北京の外文出版社より、今年6月に編集・発行された『中国大学ガイドブック』(2004年第1版)は、そんな中国の教育関連情報をこの1冊に網羅した決定版。中国の高等教育の構造、政府の関連政策、国際協力、企業との提携状況、および各大学700校の最新情報などが満載だ。

 具体的な内容は、中国教育部(日本の文科省に当たる)が認可した、約700大学の概要(沿革、学科設置、研究機関、学部構成、国際協力動向、学生募集要項)、大学の科学研究・技術協力の現状、高等教育分野における発掘可能な事業の機会分析など。

 A4サイズ、約450ページで、英語版、日本語版、韓国語版を同時出版。本書は「中国の高等教育システムや大学への理解を深めたい」「中国各地で優秀な人材を雇用したい」「中国の大学研究機関との提携を強化したい」「中国で留学したい」という人たちにも、有益な情報を提供するに違いない。(editor@flp.org.cn外文出版社)

傅敏・編 榎本泰子・訳 『君よ 弦外の音を聴け

 現代中国で20年にわたりロングセラーとなっている『傅雷家書』の邦訳版(榎本泰子・訳)が、ついに日本でも出版された。

 傅雷(1908〜1966年)はヨーロッパ文化に精通し、波乱の中国現代史を歩んだ知識人。ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』やバルザックの『ゴリオ爺さん』などの名訳で知られる中国の著名なフランス文学翻訳者だった。その長男傅聡は、中国の第1世代の若きピアニストとして、ポーランドで開かれたショパン・コンクールで東洋人初の入賞を果たし、その後、留学先のポーランドからイギリスへと移住した。

 本書は、息子の傅聡がイギリスに移住した1954年から、冤罪を蒙って妻とともに命を絶った1966年まで足かけ13年に及び、傅雷が息子に書き宛てた60通の手紙を中心に構成されている。本書によって中国知識人家庭の人間的大きさや、波乱の人生を送った中国知識人の孤独感を再認識することだろう。

 次男の傅敏が編纂した『傅雷家書』は、1981年中国で刊行されるやベストセラーとなり、個人読者によるのべ100万部以上の販売部数を記録。まさに中国人に「うってつけの教材」といわれたのである。(樹花舎)

山本一太・主編 段躍中、蒋眩など訳
『如果我是日本首相――日本新生代政治家宣言』

 

 日本の山本一太参院議員が主宰する政治研究会「新世紀総理宣言」が、2001年11月より開かれた。研究会では与野党の若手政治家を毎週1人ずつ招き、「私が総理になったら」という角度で、日本の将来構想について語ってもらった。本書は、その発言内容を中国語訳したもの。本書が中国で出版されたのは、中日両国の翻訳界、出版界からすれば、じつに喜ばしいことである。

 本書には、29人の若手政治家の発言が収録されている。そこからは、次世代日本で舵をとる「候補者」たちの国家構想、政策設計、政治理念が見てとれる。若手政治家たちの肩に日本の未来がかかっている。それは同時に、中日両国の今後の交流と発展にも影響するだろう。相互理解と交流は、両国間の差異やギャップを埋める方法の一つ。それにより本書の出版は、積極的な意義を持つことだろう。 (当代世界出版社)