2年前のある週末、高校二年生だった沈桐エンさんは、北京の繁華街・王府井をぶらぶらしていた。すると、アメリカのあるスカウト会社を名乗る人がやってきて、「おじょうさん、あなたはとても愛らしい。私どもの会社と契約を結んでくれますか?」といきなり申し込んだのだ。沈さんはハッとして、どうやって私を見つけたのだろう、とふしぎに思った。当然ながらそのスタッフは、磨けば光るスターの「原石」を見つけるのが仕事だった。活発で美しい彼女を見たとき、一目で気に入ったのである。沈さんは、夢見ごこちで小躍りしながら家路についた。そして、まもなくして「自分を試してみたい」とその会社と契約をした。
スカウト会社のホームページに写真や資料が登場したとたん、彼女の暮らしが変化した。多くの企業や広告会社が、こぞって彼女を広告やイメージキャラクターに起用したのだ。こうして青春まっただなかの沈さんは、頻繁にメディアにお目みえするようになった。
当時、高校生だった彼女にすれば、この偶然も自己表現の才能を教えてくれるものだった。高校卒業時には、中国中央戯劇学院(「中戯」と略称)の演劇学部に合格。中国の演劇大学ではトップクラスの学校だ。今をときめく映画スター、劉イエ、章子怡らがここを出ている。数千人もの受験生のなかで、プロの演技を学んだことのない沈さんの実力は抜きんでていた。そして、人もうらやむ「中戯」の学生になったのだ。「人の芸術センスは、生まれつきのものでしょう。だから私はとてもラッキーでした」と彼女は語る。
母親から見ればおとなしい性格なのだが、同級生に言わせれば一番おてんば。歌うことが大好きで、ひまがあると仲間たちとカラオケに行き、マイクを離さないのだという。日本の流行文化にもはまっている。日本の歌手や映画スターのことを話しだすと止まらない。「日本のことなら、なんでも好きなの。大学を卒業したら、日本へ行って自分を磨きたいですね」と彼女はニッコリほほえんだ。(写真・馮進 文・王浩)
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