小梁王を槍で突く
古典小説『説岳全伝』から題材をとった彩色画である。岳飛(1103〜1142年)は、南宋時代に金に抗した名将である。南宋時代、朝廷は文武の試験を行って、金軍とたたかう英雄を天下から広く募った。若い岳飛は、義兄弟と都において試験にのぞんだ。
同じく受験生の柴桂という人物は、権勢をほしいままにし、「小梁王」と呼ばれていた。試験主管の張邦昌らは、小梁王から賄賂を受けたが、ただ一人、宗沢だけが拒んでいた。
試験当日、小梁王は弓矢も文才も岳飛にはかなわなかった。武道比べとなり、岳飛は小梁王を傷つけることを心配し、どちらが死んでも負傷しても、責任を負わないという「生死の契約書」を交わすようにと求めた。その後、岳飛は悩むことなく、突撃したのだ。
突然、槍を振ったかと思うと、小梁王を落馬させ、槍で突いて死に至らしめた。それを見た張邦昌は慌てふためき、小梁王のかたきを討とうと岳飛を押さえ、打ち首にしようとしたが、宗沢が岳飛を守りぬいた。義兄弟の牛皋ら4人の大立ち回りで岳飛は救われ、馬に乗って逃げ去った。描かれたのは、英雄・岳飛が小梁王を槍で突く瞬間である。
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