中国歌劇舞劇院が制作し、演出した音楽劇『兵馬俑』が昨年四月、カナダのバンクーバーで上演された。そのなかで、ある若手琵琶奏者のすぐれた演奏テクニックと出色の表現力が、観客たちを魅了した。その奏者が蔡瑾さんだ。
上演前にステージで、音の調整をしていたときのこと。あるカナダの老婦人がやってきて言った。「お嬢さん、あなたの琵琶はすばらしい音色ね。東方の音楽の魅力を感じましたよ」と。
聞いてみてわかったのだが、その人はつづけて三回も『兵馬俑』を見たのだという。異国でそのような歓迎を受け、大感激した蔡さんだった。そして彼女自身も、中国民族音楽の魅力をじゅうぶんに理解している。
中国の民族楽器のなかで、とりわけ琵琶はマスターするのが難しい。しかし、蔡さんは意外にも琵琶を選んだ。「その形が美しいからかしら。九歳のころ、おじさんの家に琵琶があって、一目で好きになりました」。その後、蔡さんは地道な努力をつづけて、国内の音楽大学では最高峰といわれる中国音楽学院に進学。卒業後は、中国歌劇舞劇院の琵琶奏者になったのである。
演奏活動を頻繁に行うとともに、北京のある小学校で琵琶教師を務めている。毎週、子どもたちに琵琶の授業を行っている。「いまは、西洋の楽器を習う子どもが多いのですが、中国の民族楽器も知ってもらいたいですね。レッスンは辛いけれど、私はとても充実しているんですよ」と、蔡さんは自信に満ちた目を輝かせた。(写真=馮進 文=王浩)
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