深遠な国茶の世界C
棚橋篁峰
 
 
香り高く、姿美しい銘茶
緑茶B

 
碧螺春の茶樹

 今回はもう一つの緑茶の名品を紹介します。

碧螺春

 「洞庭碧螺春」とも呼ばれ、江蘇省蘇州市の太湖に突き出た半島の中にある東洞庭山、西洞庭山を中心に生産されます。年平均気温は摂氏15・5〜一6・5度で、降水量が1200〜1500ミリの気候温暖の地です。太湖も雲霧が多く、日射は強くなく、土壌は酸性で肥えているので、天然の茶を栽培するのに最も適しています。

 清代の康熙38年(1699)、皇帝が南方巡幸をした時、当地の役人の宋犖と張羅の二人が迎える事になりました。宋犖は詩人で、書画に詳しく、お茶を非常に好んでいました。

 康熙帝が清楚な接待を希望することを知っていたので、巡幸された時、部下に市場で販売していた新鮮な東洞庭山のお茶「嚇殺人香」を買いに行くように命じました。康熙帝が太湖に到着して、東洞庭山の美しい景色を楽しんだ後、宋犖は皇帝に「嚇殺人香」を
献上しました。

 強く捻られ、田螺のように巻き、白色の柔らかい毛が多く、白い毛が茶葉の緑色を覆っています。お湯を入れると、茶葉が雲や波のように浮かび、茶湯が青緑色で、芳しい香りがします。飲んでみると爽やかで大変美味でした。

 康熙帝に茶名を問われた宋犖が「碧螺峰で生産されて、濃厚な香りがするので、地元の人達は『嚇殺人香』と呼んでいます。地元の方言で『大変良い香りがしている』という意味でございます」と説明すると、帝は「良いお茶であるのに、名前はあまり良くない。碧螺峰で生産されて田螺のように巻いているから、『碧螺春』と呼べ」と命名したという伝説があります。

 3月下旬〜4月中旬、茶芽が1、2センチになると、一芽一葉を摘み取ります。若葉が若ければ若いほど、出来上がる茶葉には白毫が多く、味は上等になるといわれます。

 淹れる際は、まず沸騰したお湯をコップに注いでから、茶葉をいれます。そうすると茶葉がゆっくりとコップの底に沈んで美味しく飲めます。或いは茶葉を入れてから、80度のお湯を注ぎます。中国の人達は、茶葉の飛び舞う姿を観賞し、その美しさを碧螺春の魅力の一つに挙げています。

【ワンポイント・メモ】
今回紹介した碧螺春は、香りも高く、姿も美しいお茶です。急須で淹れて飲むのも良いのですが、グラスで姿を見るのもお薦めです。又、蓋付き茶碗に直接茶葉を入れて飲むのも良いと思います。碧螺春は白く濁っていますが、それは白毫が多いからで高級品の証です。

棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

  本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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