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『鴛鴦蝴蝶』(オシドリとチョウ)
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北京っ子の阿秦は、たまたま杭州にやってきて、喫茶店を開く小語と偶然にも知り合った。2人は互いに好感を持つのだが、はにかんでいて告白できない。阿秦がそこを離れたのちに、友人・小トンの励ましもあって、小語は北京へ阿秦を探しに出かける。しかし、再会してすぐに別れを告げられる。小語は杭州に帰りついたが、すっかり落ち込んでしまう。小トンは、そんな彼女に「愛はロマンチックだけれども、もっと大切なのが妥協と与えることなのよ」と言ってなぐさめる。 北京では、阿秦もいっさい別の女性とつきあおうとはしなかった。小語のことを思っていたのだ。しかし、心の奥底にあるためらいと逃げの気持ちが、彼の自信を失わせていた。小語のために責任を負うことも、彼らの関係をよくすることも、どうすればいいのかわからなかった。 時間が流れ、矛盾と互いを思う気持ちの中で、阿秦と小語は自分に向き合い、愛を取り戻すことができるのだろうか……。 この作品は、映画『滾滾紅塵』などで知られる台湾の映画監督・厳浩がメガホンを取った。厳浩は、女性の真理をテーマとし、感情豊かな映画を作ることに長けている。スタッフには、古くからの仲間たち――『阮玲玉』で知られるカメラマンの潘恒生、『花様年華』で美術を担当した張叔平らを迎えている。 厳浩は、映画のタイトルを『鴛鴦蝴蝶』(オシドリとチョウ)としたことについて、「確かに、1930年代の『鴛鴦蝴蝶派』(現代中国で、立派な男子と美しい女性の愛情を描いた文学流派)という意味を込めている。しかし、それよりもさらに、現代人の矛盾に満ちた恋愛生活に踏みこんだ着眼したものだ」と語っている。 周迅と陳坤が、それぞれ小語と阿秦を演じている。共演した前作の映画『恋愛中的宝貝』(邦題『恋愛中のパオペイ』)は、2004年東京国際映画祭でも上映された。今回の映画で、2人はふたたび恋人役を演じたが、観客には異なる印象を持ってもらいたいと望んでいる。
「クジャクは、もっとも観賞性を備えた動物だ。けれども人間であれ、少しもそれにひけをとらない。映画に描かれる3人の子どもたちの物語や人生の経歴は、華やかな色彩のクジャクの羽毛と同じように数多い」。映画は、1970〜80年代に、ある北方の小さな町に住んでいた3人の若者たちの、それぞれ異なる人生の断片を描いている。最初の衝動から理想が打ち砕かれるまで、徐々に落ち着いていく平淡な生活過程が描かれている。 監督の顧長衛は、かつて『紅高粱』(赤いコーリャン)、『覇王別姫』などの多くの著名な映画でカメラマンを担当。『孔雀』は彼の監督処女作であり、「陳凱歌、張芸謀らと協力する中で、たくさんの有益なものを学んだ。だが、陳凱歌や張芸謀から離れて長くなり、自分なりの表現をしたくなった」と語る。 第5世代の監督の作品は、たとえば『活着』(活きる)、『覇王別姫』などもそうだが、広い社会構造を背景として、社会の変遷における個人への影響を表したものが多い。しかし、『孔雀』は、さらに個人の成長や運命について関心を向け、時代設定をより希薄化させている。顧長衛によれば「だから、ほかの歴史的背景に置いても大丈夫なのです」という。 北京でプレミア上映されたころは、宣伝活動をする前であり、しかも毎週同一時間に単館上映されていた。しかし、観客たちの関心を広く集めて、プレミア上映館は毎回満席になったそうだ。 本作品は2月19日、第55回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員特別大賞)を受賞した。
公羊・主編 『思潮』 「民主」「民族」「民生」は、近代以降における中国社会の基本問題である。改革・開放がはじまって以来、中国の社会環境には大きな変化がおとずれた。中国のインテリたちは、この3つの基本問題をめぐって、これまでに多くの論争を行ってきた。1980年代、中国の思想界には、西洋理論に依託する「啓蒙主義」と、中国伝統理論を主とする「旧左派」の2大観点があった。その後、20世紀末になり、知識界に意表をついて、新しい理論と論述をもつ「新左派」が現れた。20年近くの思想界の歴史に対し、一種の反省と批評の立場をとったのだ。その出現は、中国知識界にさまざまな反響をまきおこした。 本書は、「新左派」思想の発展をめぐって、90年代以降の中国思想界の変化を概括的に紹介している。また当面、多くの読者が関心をもっている問題に対して、解答を示している。本書の内容は広範におよび、その視点は新しい。読書するに値する一冊である。 陶立ハン・主編 『中国民俗大系』叢書 中国初の民俗文化大成叢書だ。 中国の各省、直轄市、自治区を巻ごとに分けて、それぞれの民俗文化事象を収録している。合わせて31巻あり、1400万字以上、4000枚あまりの写真を収める。各地区、各民族の歴史、人文・地理環境のほか、「物質民俗」の生産、交通、商業・貿易、居住、飲食、服飾、また「社会民俗」の村落、家族、祭事・祭日、礼儀、民間組織と社会団体、さらに「精神民俗」の民間信仰、禁忌、巫術、民間文芸、スポーツ、競技などの民俗事象を収めている。内容は豊富で、資料は詳細、正確であり、さらに文化、学術、収蔵の価値が高い。 この叢書は、中国中央民族大学教授で、中国民俗学会副理事長の陶立 氏が主編(編集主幹)を担当、200人以上の民俗学専門家、学者が、編集に参加している。彼らは、各地で徹底したフィールドワークを行い、多くの調査資料と研究成果を集め、10年の歳月をかけて、ついにこの叢書を編集・出版したのである。(甘粛人民出版社) 銭存訓・著 『中国紙和印刷文化史』(中国の紙と印刷の文化史) 紙の製造と印刷の技術は、中国4大発明のうちの2つであり、この2者は中国文明発展史において、重要な位置をしめる。本書は、中国の製紙と印刷の発明から19世紀末までの発展過程において、その2者の中国、世界の文化史での位置と作用、影響について重点的に述べている。 資料は詳細で正確、内容は豊富である。そして、ある独特な側面から、中国文化の発展過程を述べており、非常に高い学術的価値がある。また、170枚あまりのイラストや写真が添えられていて、読者にはわかりやすい。(広西師範大学出版社) 『人民中国』おすすめのベストテン 1.『黄河辺的中国』 曹錦清・著 上海文芸出版社 |
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