チワン族の心 歌にのせて
李衛紅さん

 チワン族の娘、李衛紅さんのふるさとは広西チワン族自治区の大新県だ。大新県の人々は、歌や踊りに長けている。見よう見まねで小さいころから歌や踊りを覚えた彼女は、四歳のときに初舞台を踏み、当地の小さなスターとなった。「小さいころは、男女の歌墟(チワン族の居住地域で、祝祭日に行われている対歌、歌垣)が一番好きでした。それを見るなり、思わずいっしょに歌い出してしまって」

 その後、李さんは広西芸術学院で民族声楽を学んだ。卒業後は広西歌舞団、つづいて北京の中央民族歌舞団でソリストとして活躍している。

 先ごろは、広西の大型ミュージカル『八桂大歌』の公演に参加した。広西のチワン族、トン族、ミャオ族などの民間歌舞に材をとり、当地の少数民族の今の暮らしを表現したもの。

 李さんは、その確かな歌唱力と少数民族音楽への深い理解によって、この舞台のソリストに選ばれた。しかし、稽古はとてもつらいものだった。「いくつかの歌は、床に座って、踊りながら歌わなければなりませんでした。集中するところも、発声方法も変わるので、とても大変だったのです。どんな姿勢でもすばやく適応して、歌えるようにならなければと思います」。そんな彼女のことを、「歌がすばらしいだけでなく、稽古も一番まじめで熱心」と舞台監督も称賛している。『八桂大歌』はこのほど、北京公演で大成功を収めた。李さんの歌や踊りも、満場の喝采を浴びたのである。

 これまでに、どれだけの舞台を踏んだか覚えていないが、日本の福岡、熊本で行われた公演は忘れられないという。「日本のお客さんたちが、私の歌を聞いてわかるのだろうかと、ずいぶん心配しました。でも、盛大な拍手をいただいて、チワン族の衣装がきれいだとか、私の歌が良かったと誉められるなんて、思いもよりませんでした」と彼女はふりかえる。

 「日本の人に私の歌を気に入ってもらえると、とてもうれしい。将来は私の歌声を通して、もっと多くの人たちに広西を理解してもらい、中国を知ってもらいたいのです」(写真=馮進  文=于文)

 

 
 

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