東京支局長 林崇珍

 



   

 東京・中野区野方地域センターの一室を訪ねると、壁いっぱいに中国の写真やポスターが掛けられていました。集まったメンバーたちは、水ギョウザを食べながら、中国の世界遺産・黄山を紹介するテレビ番組に見入っていました。

 この「中国の歴史と文化を知る会」(通称・中野区ギョウザの会)は、中日国交正常化三十周年にあたる二〇〇二年の春に発足しました。中国に詳しいジャーナリストの小林惣太郎さん(六十四歳)を会長として、中国に関心をよせる四十人ほどがそのメンバーです。「日中両国が仲良くしなければ、アジアの未来はない。一国を理解するには、その国の文化と歴史を知ることが基本だ」という小林さんの信念のもと、ギョウザを食べながら中国を理解しようとする集まりがスタートしたのです。

 月に一度の文化講座だけでなく、この三年に五回もの訪中団を組織して、中国の東北地方などを巡りました。一般の旅行団と違うのは、訪問先では必ず地元の食堂で食べたり、自由市場で買い物をしたり、劇場で地方劇を鑑賞したりすることです。つまり、じっさいに庶民生活を体験しながら人々と交流することで、誤解や偏見がなくなり、中国理解が深まるというのです。

 昨年秋の江南の旅に参加した遠藤節子さん(東京学芸大学名誉教授)は、こう語ります。「南京の午朝門公園では、思いがけず地元の

 
 

人たちとふれあうことができました。また、夕食をとった南京一の『大排タン』(露店料理屋)は、ものすごく活気があって圧倒されました。一般のツアーでは味わえない体験でした」。南京は反日の拠点だという日ごろのマスコミ報道とは異なり、南京の人たちは心温かく、親切だと感じたようです。

午朝門公園・南京故宮跡の城壁上で出会った南京の夫婦と遠藤節子さん(右)(写真提供・遠藤さん)

 中国旅行は、帰国してからも写真展に発展しています。旅で撮った写真や、中国大使館から借りたものなどを合わせて「中国の西部」「北京」などの写真展をこれまでに五回も行いました。写真展を訪れた人と交流することで、会のメンバーも徐々に増えているそうです。

 2008年の北京五輪、10年の上海万博など、中国の魅力はさらに輝くことでしょう。中国観光局のサイトによれば、昨年は中日関係がぎくしゃくしたにも関わらず、中国への日本人渡航者はのべ330万人に達し、前年比47・8%増を記録しました。SARSの終息に加えて日本人の短期訪中ノービザ化により、渡航者数が急増したと考えられます。

 ギョウザの会は、小林会長の個人的なパイプを活かして、ふつうとは一味も二味も違う旅を続けています。そこからは、オリジナリティーあふれる旅を求める日本人観光客の声が聞こえてくるようです。中国旅行を扱う旅行会社にとっても、参考となるプランになるのではないでしょうか。



 
 

  本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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