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西第二環状道路にある金融街 |
中国のどこの都市でも、銀行や金融機関のビルは最も覇気があって美しい。北京の一番立派な建築物も、やはりホテルと銀行本部のビルだ。これらの建築物が、国際化した大都市の建物と空の境界線を変え、古都の風貌をすっかり様変わりさせた。
北京の都市計画では、西第二環状道路(西二環路)内の復興門から阜成門までの通りに面した地区を金融街としている。現在、十棟近くのビルが聳えたち、金融街の風格を持ち始めた。これらの銀行本部は、中国の経済発展のエネルギーを司っていると言える。
銀行はどのように誕生したのか? きっと人口が密集し、貿易が盛んな都市で誕生したのだろう。人々は金銭を信頼できる組織に預け、その組織は金銭で金銭を儲け、その営利の一部を預金者に利息として返す。これが銀行誕生の簡単な原因だ。
金融業はハイテク産業や情報産業と同じように、情報や知識経済の時代の成長点となった。北京の建築計画からその重要性が見てとれる。市の中軸線である天壇から亜運村(アジア大会の選手村)には、国家の行政や文化の中心となる大型の建築物を分布し、西二環路には金融街を作り、東二環路から東には中央ビジネス区(CBD)を建設している。こうしてみると、国際都市にとって、金融業とビジネスは都市の両腕といえる。この二つの支持なしには、都市は発展どころか、麻痺状態に陥ってしまうだろう。
西二環路に金融街を建設する計画とその実施については、反対意見もある。ある人は、銀行や金融機関の本部が西二環路にあることで、東のCBDの計画を遅らせ、発展を滞らせたと考えている。一方では、金融とビジネスは、決して衝突するものではなく、双方の職能はしっかりと住み分けがあり、異なった使命と責務を持っていると考える人もいる。
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中国人民銀行 |
復興門一帯には、すでに中国工商銀行、中国銀行、中国人民銀行、中国建設銀行など十行の金融機関の本部があり、国家の金融パワーを結集させ、動かす責任を担っている。
建築美学からみると、この辺りの金融機関の建築物は非常に特徴がある。比較的早くに建設された中国人民銀行本部は、「聚宝盆」(いくら取っても尽きない宝物を盛った鉢)の観念を体現している。内側へ向かってくぼんでいる形が鉢のようで、真中の突起物は「元宝」の中心だ。「天円地方」(天は丸く、地は四角い)は中国古代の天地を一つにするという観念であるし、2000年以上受け継がれてきた「方孔銭」(真中に四角い孔があるコイン)の意味も含まれている。
中国建設銀行は、丸い屋根を四角い台座の上に置き、黒く装飾され、ゆったりと荘厳な雰囲気に包まれている。
「斗」は中国古代の計器だが、たくさんのものを収容でき、多くの金銭財物を集めることができるという。オフィスが数多く入っている通泰ビルはこの「斗」のイメージで建築され、独特の風格を持っている。
中国工商銀行は、外国と合作して設計された鉄筋コンクリート構造で、通りを見下ろすように建っており、威厳に満ちている。大きな中庭があり、伝統的な中国建築の庭園理念を取り入れている。
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中国古代の貨幣――布幣(鋤の形をしている青銅幣)をモデルにデザインされた金融街のモニュメント
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建設されたばかりの天銀ビルや国際金融ビルも、優れた建築物だ。天銀ビルの緑色の屋根は中国の伝統的な建築物の特徴であるが、両側は古い砦のように対称になっていて、真中は「ダブルバーガー」のような形をしているので、宇宙人のロボットあるいは変形の金剛力士を連想させる。また、国際金融ビルは径間(支柱から支柱までの長さ)が広い鉄筋コンクリート構造で、凱旋門の雰囲気を作り出し、四棟が一体となった気風がある建築物だ。
ところで、金融街の建築物の高さは60メートル前後に制限されている。しかし、ここの建築物がすべて60メートルだったら、低くて太い建物が並び、景観としては美しくないだろう。そこで、都市計画部門は調整しようと考えているようで、視覚上の変化を配慮している。すでにA区とB区の工事が始まっているが、特にB区は金融街の中心となるので、それにふさわしく高さの制限を百メートルにまで引き上げてもいいと私は考える。こうすれば、すべての建設が完工する2007年には、中国の「ウォール街」の建築の輪郭は、さらに美しくモダンになるだろう。
金融街は都市の経済の命脈である。その華麗で立派な様子は、都市の繁栄と発達を前もって示している。両者は互いに補完しあって発展していくものだろう。
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