レストランで食事をする時、食べ物に髪の毛や砂が混入していることはよくある。その場合、たいていの人は、レストラン側に文句を言い、新しいのと取り換えてもらうか、または代金をまけることで話がつく。ところが、それでも納得せず、裁判所に訴えを起こす人もいる。
北京の弁護士、張さんもその一人である。彼は、昨年、ある日本料理店で食事したが、注文したうどんに一本の髪の毛が入っているのを発見した。店に文句を言ったところ、店側は、謝ったうえ、新しいうどんと取り換えた。
しかし、張さんはなお不愉快で、この店が「いらっしゃいませ」など日本語で顧客を送迎していることも気に入らなかった。そしてついに、その日本料理店を相手取り、訴訟を起こした。
張さんの主張は、その店の行為によって、消費者としての権益が侵害されたこと、またその店の日本語による接客は、消費者の人格および民族的習慣を尊重していないことを理由に、北京の新聞に謝罪文を掲載すること、この訴訟のために休職した費用や慰謝料など計5000元を支払えというものであった。
一審、二審とも、張さんの主張は認められなかった。二審の北京市第一中級人民法院は、食べ物に異物が混入したことについては店側に過失があったが、張さんの同意を得て、問題のうどんを新品と交換し、謝罪し、さらにうどんの代金をもらわないでもよいと考えていたことから、店側は相応の民事責任を負担したと認めるのが相当であると判断した。また、日本語で顧客を送迎することについては、そのレストランの特色を示すためのものであるとし、張さんの言い分を退けた。
このような紛争では一般に、消費者が同意して問題の食べ物を新しいものに交換した場合、双方が紛争解決に合意したものと見なされる。だから、訴訟を起こしても、通常は敗訴する。従って、店側の提示した解決案を受け入れたくなければ、交換した食べ物を食べたり、減額後の代金を支払ったりしては、もはや店側の責任を追求することができなくなる。
レストランなどの経営者としては、こうした紛争は、その場で謝罪したうえ、新品と交換し、あるいは代金を減額するか、免除するなどして、問題を解決するのが望ましいと思われる。さもなければ、話し合いにより解決できる紛争が、訴訟事件に発展する恐れがある。マクルドナルド北京国華店は昨年、そうした事態に遭遇した。
昨年4月1日夜九時ごろ、北京市民の楊さんは友だちと、この店で食事をしたが、店員のミスで、楊さんらの頭上の電灯が消えてしまった。無意識に頭をもたげてそれを見たとたん、楊さんはコーヒーにむせた。ミスをした店員に謝るよう要求したが、満足すべき回答は得られなかったという。
夜12時に、店の上司の一人が駆けつけてきて、楊さんと交渉した。しかし店員は、楊さんの居座りによって店の安全が脅威にさらされたとして110番通報した。駆けつけてきた警察は、事情聴取後、楊さんの行為は「治安管理条例」に反していないと判断した。
問題はこじれ、その後も楊さんは店側と数回も交渉したが、話し合いは不調に終わった。このため楊さんは、店を相手取りに、コーヒー代45元、資料調べの費用40元、慰謝料百元、弁護士費用500元の賠償および訴訟費用の負担を求める訴訟を起こした。
北京市宣武区人民法院は昨年11月1日、店側が楊さんに謝罪し、了解を得るべきであったにもかかわらず、交渉過程において110番通報するなど不当な方法をとったため、紛争が激化し、楊さんの合法的権益は侵害されたと判断して、楊さんの請求を全面的に認める一審判決を下した。
このように、レストランは、実に紛争が多発する場所である。それは恐らく万国共通だが、往々にしてその国の特色を帯びている。例えば、以下の事例は、いかにも米国らしい。
2001年1月、ニューヨークの人気の和風レストランで、家族とともに食事をしていた47歳の男性のコレイティス氏が、シェフの投げたエビをよけた際、首を痛め、その数カ月後に死亡した。家族は、そのレストランを相手取り、100億円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
訴えられた和食レストランの弁護士は「コレイティス氏は、むしろ飛んで来たエビを口でキャッチしようとしていたのではないか」として、訴状の主張を否定した。
しかしロイ・マーホン裁判官は、ひとまず家族の訴状を認め、コレイティス氏の死亡の原因が、飛んで来たエビにあるか、医療ミスにあるかは、法廷での陪審員の判断に委ねたい、と話しているとのことである。
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