今回は高級緑茶の代名詞となった雲霧茶を紹介しましょう。
★廬山雲霧
昔は、聞林茶と呼ばれ、明代から現在の名称を使うようになりました。江西省の世界自然遺産に登録された廬山で生産されているお茶です。廬山の北は長江に臨み、東はロカ陽湖に接し、最高峰の海抜は1543メートル、山には断崖や絶壁が多く、峡谷がたくさんあります。茶樹は海抜500メートル以上の修静庵、八仙庵、馬尾水、馬耳峰、貝雲庵などに分布しています。
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「廬山雲霧」の生産地である廬山(馮進) |
湖の水の蒸発により、雲や霧が一年中発生する状態で、年間平均気温は摂氏11・5度、昼夜の温度差は21〜23度、年間降雨量は1249〜2339ミリ、平均湿度は78%。海抜が高く春が遅いため、茶樹の芽生えは穀雨(谷雨)以後の4月下旬から5月上旬になり、霧が最も多い時期なので、雲霧茶の独特な品質が生まれます。
他の茶より摘み取りの時期が遅いため、穀雨から立夏の間に、一芯と伸びたばかりで長さ5センチ以内の一葉を摘み取ります。紫色の新芽、虫食い茶葉、欠損茶葉などを取り除き、日の当たらない風通しの良いところで4〜5時間程度干します。その後、殺青、振散、揉捻、理条(条状に整える)、搓条(条状に捻る)、提毫(白毫を整える)、乾燥、選別などの工程で製造されるのです。
茶葉の外形はふっくらとして白毫が現れ、深緑色で蘭のような爽やかな香りがあり、濃厚な味は新鮮で、爽やか、甘くまろやかです。茶湯は明るい緑色で後味には甘味があります。
廬山雲霧は、緑茶の中で高い評価を受けています。その理由は、ポリフェノール成分が28・4%、アルカロイドとビタミンCもたくさん含まれ、健康に大変効果的だからです。
廬山での茶樹の栽培は晋代(300年代)に始まりました。麓の九江は唐代には既に茶葉の港となっていたので、白居易(楽天)「琵琶行」の中に「前月浮梁に茶を買いに去る」の詩句が見られ、茶商が九江から浮梁(景徳鎮)の間を行き来して茶葉を販売する様子が分かります。
【ワンポイント・メモ】
昨年、私は、廬山雲霧の特別な茶園で最高級の雲霧茶を飲む機会を得ましたが、まろやかで清香が有り、時の経つのを忘れました。
蓋碗に三グラム程入れてお湯を注ぎ、茶湯の色の頃合いを見て飲んでみて下さい。勿論、一般的なものと高級品では大きな差がありますが、廬山の仙人になったような気分になれます。
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棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。
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