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『上学路上』(通学の道で)
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中国・寧夏回族自治区の西海固。貧しい家の娘である12歳の王燕は、24元8角の学費と雑費が払えないために、小学校を中途退学させられる窮地に陥っていた。自分の家にこれ以上、負担をかけたくないと思った彼女は、夏休みを利用して学費を捻出することにした。 わずか10個のニワトリの卵からはじめた、その苦難と想像力に満ちた「財産を貯める」プロセスとは……。 彼女は市場で、10個の卵を3元で売った。また、母親がむりやり王燕を見合いに行かせたときには、そのお金で見合い相手の男の子から1本の筆を買った。教師のところでは、その筆を5元で売った。 また市場へ出かけた彼女は、そのお金で掛け売りをしてもらい、1匹の子羊を手に入れた。子羊を大きく育てて売りさばくと、水固へと向かう交通費を手にした。水固には、汚染されていないクコ林が広がっている。そこでは、1斤(500グラム)のクコを摘むと、2角のもうけになるのだった……。 脚本を担当した趙冬苓は、脚本を書くにあたり西海固へ行き、現地で取材をしたのだという。彼女はいう。 「西海固は驚くばかりの貧しさでしたが、現地の人たちの落ち着きや積極性、そして純真な精神世界を見ることができた。子どもたちが知識を求め、運命を変えるために、たいへんな努力をしている姿も見ました。人々の生活は確かにとても苦しいのですが、彼らは少しも不平をもらさず、劣等感を持つこともない。非常に楽しく、明るいのです」 監督の方剛亮は、潜在力をもった若手監督。以前、映画チャンネル用に製作したテレビ映画『情不自禁』(感情を抑えきれない)は、本人にも意外だったらしいが、中国大学生映画祭の最優秀作品賞を受賞した。そして今回の『上学路上』が、彼の第1作となる35ミリの長編となった。(写真提供・新浪娯楽)
3世代同居をしている、ある大家族。2人姉妹の佳期と佳音は、いずれも不満を抱えていた。なんと彼女たちよりもずっと若い男の子・廖宇に、同時に恋してしまったからだ。どうしてよいかわからない三角関係に悩む佳期たち……。そんな折、姉の佳期のかつての恋人である万征は、ふいに気づいてしまう。「あのころは佳期とケンカばかりしていたけれど、やはり一番彼女のことを愛しているのだ」と。 彼は、佳期との愛を復活させることができるのか? また、それと同時に姉妹の両親、祖父母もそれぞれ感情的な問題に直面していた。あるとき、家族みんなが「感情」という2文字によって、さんざんな目にあう。そして、こう感嘆するのであった。「感情を出さなければ、何でもいい!」 このドラマの最大の特徴は、ユーモアにあふれた趣のある言葉にある。女主人公の佳期を演じる陶虹は、こう語る。「この作品は、生活という表現方法を使って、非常に重いテーマを描いています。多くのセリフに趣があって、平均すれば10句に2句は伝統的な話が込められているのです」 脚本を担当した趙趙は、近ごろ人気の若手女性作家である。彼女の作品は、北京人がもつ独特なユーモアと諧謔をよく表している。とても親しみやすいので、若い読者に大いに歓迎されている。(写真提供・中国音像商務ネット) ベストセラー 『漢字王国――講述中国人和他們的漢字的故事』 中華文明を伝える漢字は、中国社会の発展と密接な関係がある。甲骨文から金文、小篆、隷書、楷書まで、それは発展と変遷のはるかなる道を経てきた。漢字のはじまりは、表意的な符号であった。1つ1つの漢字の形と意味からは、中国人の精神世界がうかがえる。それは、漢字のもっとも魅力的な一部であろう。 著者の林西莉氏は、スウェーデンの有名な漢学者である。本書では長年の研究を通して、漢字からあらゆる中国文明の発展と変遷までを述べている。本書を完成させるために、中国をなんども訪れ、数多くの写真を撮り、中国の言語学者を訪ね、8年の歳月を経てようやくまとめ上げたのである。 本書は、水と山、野生動物、農耕、酒と器皿などの章節に分かれている。それぞれに関連するいくつかの漢字を分析し、漢字の中に見られる中華文明を解説。読者のために、興味深い漢字の世界を紹介している。(山東画報出版社)
中日両国2000年あまりにわたる往来の歴史の中には、人を感動させる数多くの物語がある。徐福の東渡から阿倍仲麻呂の来華、孫中山(孫文)や周恩来らと日本の友人との交流、八路軍の聶栄臻将軍(のちの副総理)に戦火のなかから救出された日本人少女・栫美穂子さんの特異な体験まで、こうした物語は、まるで輝く1枚1枚の記憶のかけらのように、中日交流史上にきらめく光を放っている。 著者は、本心を吐露するかのような筆致で、そうした感動的な物語を描いている。「これは、紙上の文章であるばかりでなく、じっさいに触れられるような事実でもある」と著者は言う。また本書は、中国語版と日本語版が同時発行されるとのこと。両国の読者たちは、互いにこの『千年の思い』を享受することができるだろう。 (浙江文芸出版社)
現代日本の著名作家であり、詩人の辻井喬氏の小説集『桃幻記』と詩歌集『異邦人』がこのほど中国語に翻訳され、人民文学出版社から出版された。 『桃幻記』は辻井氏の最新作で、8つの短編から構成されている。短編はいずれも現代中国がテーマ。ごくふつうの中国人の日常生活を描いている。文学作品において、ある外国人が他国を観察し、それをテーマとして創作するのは、非常に珍しいことである。またこの作品は、読者が中国文化と現代中国人の精神世界を知るのに、独特な視角を与えている。 『異邦人』は、辻井氏の20冊あまりの詩集から、作品の一部を精選して構成された。格調高く、社会批判の意識が鋭い。作者50年来の創作詩歌の精華なのだ。中国で出版された現代日本の詩歌作品はわずかであるため、本書は中日両国の文学の理解を深めるよい手助けとなるだろう。 『人民中国』おすすめのベストテン 1.『無字』 張潔・著 人民文学出版社 |
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