深遠な国茶の世界G
棚橋篁峰
 
 
        偶然が生み出した芳香
     青茶(烏竜茶)@

 
烏竜茶を飲む時に利用される茶具

 烏竜茶は宋代に皇帝に献上されたお茶の、竜団、鳳餅茶(竜や鳳凰の絵柄をあしらった固形状のお茶のこと)から発展してきたものです。福建省の『安渓県志』によれば「安渓人は清の雍正3年(1725)最初に烏竜茶の作り方を発明した。その後、その方法がビン北(福建省北部)と台湾に伝わった」と書いてあります。他の資料には、1862年に福州市にすでに烏竜茶の茶店があったという記録もあります。台湾では1866年に烏竜茶を輸出し始めています。

 烏竜茶は半発酵茶で、開発者の名前から名付けられました。1700年代の初め頃に生産が始まったといわれますが、『福建之茶』『福建茶葉民間伝説』等の烏竜茶の伝説を紹介しましょう。

 清代初期、福建省安渓県西坪鎮堯陽郷南岩村に蘇竜という茶を栽培する農民がいました。彼は狩りの名人でもあったのですが、顔が黒いので「烏竜」と呼ばれていたのです。ある春の日に烏竜は茶摘みに山に入って、昼頃にキバノロ(シカ科の哺乳類)を発見して銃で撃ちました。負傷したキバノロは山の中に逃げて、烏竜はその後を追いかけ、夕方になってやっと捕まえて家に持って帰りました。家族たちは喜んで一緒にキバノロを料理して食べました。あまり嬉しかったので烏竜はお茶のことを忘れていたのです。翌朝、昨日摘んだ茶を思い出して出してみると、一夜置かれた茶葉は赤くなっていてとてもよい香りがしました。その後、実験を繰り返して、遂に烏竜茶が出来上がったのです。

 烏竜茶は緑茶と紅茶の製茶方法を合わせて作った茶なので、その質は双方の中間で、紅茶の濃い味と緑茶の清らかな香りがあります。

 烏竜茶は産地の違いによって@「ビン北烏竜」福建省武夷山市の岩茶(大紅袍、白鶏冠、水金亀、鉄羅漢、肉桂、水仙など)A「ビン南烏竜」安渓県の鉄観音、本山、毛蟹、黄金桂などB「広東烏竜」広東省潮州市の鳳凰単ソウ、宋種単ソウなどC「台湾烏竜」台湾の凍頂烏竜などがあります。これらは代表的な烏竜茶です。

 なお、台湾の烏竜茶は発酵程度が少し低いので、軽発酵茶に属します。発酵の度合いの変化が近年出てきたため烏竜茶も新しい段階に入ったということが出来ると思います。

【ワンポイント・メモ】

 今日の台湾茶芸では、茶壺(急須)と茶海(茶湯の濃度を一定にする器)と聞香杯、茶杯を準備して、茶葉を茶壺の3分の1程度入れ、一煎目は50秒程度蒸らし、二煎目は20秒程度蒸らし、それ以後は徐々に時間を長くします。上手く淹れれば5煎から7煎は淹れることが出来ます。高級な烏竜茶ほど茶芸は大事です。

棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

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