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映画 『世界』
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北京郊外にあるテーマパーク「世界公園」。ここには、世界の観光名所のミニチュアが集まっている。趙小桃とボーイフレンドの成太生はここで働き、暮らしていた。小桃は毎晩、歌と踊りのショーでグループダンスのダンサーを担当していたが、その単調な生活には、ほとほと嫌気がさしていた。また、公園の保安隊長・太生は「エッフェル塔」が担当エリア。余暇ともなると「人助け」のため、ニセの証明書を作ることに奔走していた。 彼はなんどか小桃と関係をもちたいと思っていたが、いつも拒絶されてしまう。そしてそれが、2人の関係に決定的な亀裂をもたらす。その後、太生と小桃と同郷の男でありながら「2番目の娘」と呼ばれている友人を、北京の工事現場に訪ねる。ある日、深夜作業中の事故により、「2番目の娘」は死んでしまう。 臨終のとき、彼は最後の力をふりしぼり、借用証書を書き上げた。そこには彼が友人たちから借りていた、いずれも十数元という小額が記されていた。世界公園の風景は美しいが、小桃や太生、それに彼らの友人たちは、依然として貧しい日々を過ごしていた。北京に長年暮らしているが、ほんとうの都市生活は、おそらく彼らからはほど遠いものだった。 『世界』は、賈樟柯が初めて国内での公開を許された作品である。映画は世界公園という小さな社会の人々や、そのなかでの出来事を通し、社会の低層界にいる人たちが目にする都市化や現代化のプロセスを描写、焦燥感やつかみどころのないムードを生み出している。 都会の新しい移住者たちの心理を正確につかんだ映画『世界』は、国内での上映中、大いに人気を博した。とくに、都会にいる新移住者たちの共感を集めたという。 賈樟柯の作品: 『小武』(『一瞬の夢』)、1998年 『站台』(『プラットホーム』)、2000年
『任逍遥』(『青の稲妻』)、2002年 『世界』、2005年 |
テレビドラマ 『這里的黎明静悄悄』(全19回)(ここの黎明は静かに)
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ディレクター・毛衛寧、張光北 1942年、5人の女性ソ連兵が、171鉄道の引込線に守衛として派遣された。彼女たちの生活は当初、じつに平穏なものだった。彼女たちは軍服にきちんとアイロンをかけたり、食事をおいしく調理したり、太陽のもと美しい裸体をさらけ出したりして、暖かな陽光がもたらしてくれる満足感を十分に味わっていた。 しかしある朝、5人の女性兵は16人のドイツ兵と遭遇し、戦闘のなかでいずれも犠牲となってしまう。ソ連テレビはこの日、「今日は多少の戦闘が発生しただけだ」という戦況を伝えた。5人の女性兵士が犠牲になったことは、ほとんど知られなかったのである。 原作小説の『這里的黎明静悄悄』は、戦時中における人々の人間性を描いたことで、文学史上でも里程標となる意義をもっている。 こうしたロシア文学や映画作品は、かつて中国のある世代の青年たちに大きな影響を及ぼした。いまの中年世代に、普遍的な「ロシアへのノスタルジー」をもたらしたのだ。そして現在、ロシアの歌曲や文学、映画は、中国でも依然として多くの人が求めている。大きな市場の潜在力をもっているのだ。 今年、中国国際電視(テレビ)総公司は、この中国人の脚本・演出、ロシア人俳優によるタイムリーなテレビドラマを制作発表、視聴者のノスタルジーを満足させた。それは、今年の反ファシズム戦争勝利60周年を記念するドラマでもある。 |
べストセラー 『大陸逍遥――用俳句和随筆触摸中国』
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岩城浩幸、岩城敦子・著、田建国、董燕・訳
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日本独特の詩歌形式として、俳句はリズムに重きをおいて、洗練された言葉をつかうという特徴を持つ。ここ数年、中国の多くの文人たちも、俳句の規律や形式にならい「漢俳」を創作している。また、多くのすぐれた日本の俳句作品が中国語訳されており、中国の読者たちに読まれている。 本書の作者である岩城浩幸さん、敦子さん夫妻は、いずれも俳句愛好者であり、長年にわたり、中国駐在生活を送ったことがあるという。余暇を利用して、2人はつねづね中国で受けた感想を、俳句にして表現していた。それをまとめたのが本書である。 全体は、いくつかの小さな章に分かれている。各章の初めには作者による俳句作品が、後ろには随筆が紹介されている。いずれも中国での細やかな生活体験、電話から年越し、旅行までを描いている。読者は、本書から多くの中国事象を理解し、なおかつ中日両国の違いを感じとることができるだろう。(五洲伝播出版社) 『無字』 張潔・著 張潔は、現代中国では数少ない、日常生活以外に強い関心をもつことのできる女性作家の1人だ。彼女の思索や苦しみ、デリケートさが、さまざまな趣に彩られている。『無字』は、張潔が何年も企画・構想を練って出版した最新作だ。80万字の力作で、3部構成。女性作家・呉為の一生における感情のプロセスを描いている。呉為と最初の夫とのやむをえない結婚、私生児となった娘との依存と衝突、苦しい生活のなかでの母親との微力を尽くした支えあい、後半生における2番目の夫との驚くような出会いと別れ……。 小説は「無字」というタイトルで、女性の結婚感情の物語をテーマとして、社会の大変革や中国社会100年来の激しい変化を表現している。小説は、2005年に中国文学の最高の栄誉である「茅盾文学賞」を受賞。中国文学界の認識と、読者の好みが一致したことを示したといえよう。(北京十月文芸出版社) 『歴史不応忘記』 イスラエル・エプスタイン著 イスラエル・エプスタイン(Israel Epstein)氏は、国際的に有名な記者だ。1915年にポーランドに生まれ、両親とともに中国へ移住。青年時代に、『京津(北京・天津)タイムズ』で報道関係の仕事に携わったのをはじめ、アメリカの『UPI』などの記者となった。抗日戦争のころ、彼は多くの国際報道人とともに中国の抗日戦争を支持。世界に向かって、中国の戦況を多数、報道したのである。 本書のなかで、著者は当時を回想している。記者としての彼は、中国で多くの真実のできごとに出合っている。それは、じつに感動的な内容だ。執筆当時、著者は90歳の高齢であったが、本書をついに完成させた。国際反ファシズム戦争勝利60周年の記念にするためである。著者は本書が上梓されてすぐの今年5月25日、北京において他界された。心より、ご冥福をお祈りしたい。(五洲伝播出版社) 『人民中国』おすすめのベストテン |
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