上海市民は年間8冊本を読む
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主に欧米の外書を扱う書店もお目見え |
今年の夏も、やっぱり暑かった。ようやくのこと暑さもひけて、ゆったり本をひもときたくなる読書の秋到来である。
日本と同様に、若者たちの活字離れが指摘される中国だが、昨年末に発表された「上海読書指数報告」データでは、上海市民の年間読書冊数は平均8冊。本の年間購入額では全国一だそうで、75.9元(1元は約14円)だ。直轄都市を対象に調査したのか、ちなみに言えば北京は次いで74.19元、天津46.61元である。
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地下鉄構内を中心に展開する書店 |
売れている本を見れば、社会の動きやそこに暮らす人たちの関心ごとが見えてくる。
テレビ番組ガイド週刊誌『上海電視』には、主要書店の書籍ベストテンランキングが掲載される。毎月のある1週から抜き出したベストテンを今年1〜8月で見てみると、登場したのは47冊。毎月、3、4冊は前月から続いて残り、6、7冊が新作と入れ替わるというペースで、上海の売れ筋本も新旧交替が速い。
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本に熱中する立ち読みならぬ座り読み族 |
そのなかで登場が最も多かったのは、作者別では日本でも売れに売れている米国のダン・ブラウン。『ダ・ヴィンチ・コード』は昨年発売以来、今も売れ続けていて、『天使と悪魔』などをあわせた計3冊で9回登場している。
日本では昨年刊行された村上春樹の『アフターダーク』もすこぶる好調で、今年4月に発売されて以来、5カ月ランクインを続けている。
必ず翻訳ものが上位に食い込んでいるのがここ数年の特徴で、海外志向の強い上海らしい。8カ月のデータを見ても14冊あって、約3割が翻訳ものという計算になる。ジャンルとしては、小説や経営・人生の指南書が中心だ。
話題の『電車男』も瞬く間に店頭に
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ダン・ブラウンのヒットは、中国ミステリーブームを作り出した |
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今年上半期、売れに売れた台湾タレントの美容指南本 |
外国でのベストセラーの記録を引っさげて売り込む作戦で、その多くにオビがつき、数十万部、数百万部の販売実績や、欧米の高級紙で絶賛といった文句が踊る。
版権獲得も、翻訳するスピードも年々速くなっていて、米国で話題となった本は、日本で翻訳出版される時間の2分の1、あるいは3分の1で、そう瞬く間にという表現がぴったりなぐらいに店頭に並ぶのである。前出の『ダ・ヴィンチ・コード』しかり、昨年のヒラリー・クリントンの自伝『リビング・ヒストリー』しかり、だ。
だから日本のものも、村上春樹や渡辺淳一(かなり、人気あり)はもちろんのこと、大ベストセラーとなり映画やテレビもヒットした『世界の中心で、愛をさけぶ』や、中国の若者たちに理解してもらえるのだろうかと少々不安も残るのだが『電車男』なども、そうタイムラグもなく上海の書店にお目見えしているのである。
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台湾の人気作家、王文華は上海でも大人気 |
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日本で話題となった『電車男』も瞬く間に上海の店頭に |
ダン・ブラウンのヒットは、中国のミステリーブームの底上げにもつながった。ブラウン本ヒットに刺激されて、1本の本の奇妙な携帯ショートメールから始まる蔡駿著『地獄的第19層』や、少女が12名の女子大学生の不可解な死亡の真相を探っていく鬼古女著『碎臉』がミステリーファンを楽しませている。『碎臉』と言えば初出はネット上で、数週間でヒット数が百万件を超えたという人気の作品。姜戎の長編小説『狼図騰』もポータルサイト『新浪網』と『北京娯楽信報』に連載されたもので、ネット発は売れ筋本の一翼を担うようになっている。
暴露本も含めたタレント本や名物記者、カメラマンなどのメディアを賑わす有名人本もベストテンの常連だ。特に、台湾出身の人気タレント、徐熙媛による美容指南本『美容大王』は売れに売れた。文字の羅列が主流だったダイエットなどノウハウ本がこれで一気にビジュアル化の道へ突き進みそうな勢いだ。
こう見ていくと、作家が構想をあたため執筆に心血を注いで紡がれた作品というのは、新境地を開いたと絶賛されている王安憶著『遍地梟雄』など数点。中国の編集者たちもかつてと違い、「売れる本」を作らねばならない時代になり、販売が見込める翻訳ものや手軽なタレント本に走る気持ちは分からなくもないが、寂しさもぬぐえない。
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