今回は、日本人が一番よく知っている中国茶・鉄観音を紹介します。
★鉄観音
安渓鉄観音は烏竜茶の最高級品と呼ばれ、茶葉は肉厚で濃い緑色、馥郁たる香りがあります。福建省安渓県西坪鎮暁陽郷を中心に生産されています。
鉄観音は春分前後に芽生え、年に4回摘むことができます。1回目の春茶は立夏(5月5日〜7日)、2回目の夏茶は夏至後(6月21日〜22日)、3回目の暑茶は大暑後(7月22日〜24日)、4回目の秋茶は白露前(9月7日〜9日)に摘まれます。
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松林頭の伝説の地 |
『清水岩志』には、「清水の高峰には、雲や霧が出る。寺僧が茶樹を植え、山の嵐気に育まれ、日月の精を受け、煙霞の靄に覆われて生長した。この茶葉を食すると、百病が治る」と記載されています。
鉄観音の誕生には2つの有名な伝説があります。今回はその1つ、「西坪鎮松林頭の鉄観音の由来」を紹介しましょう。
『鉄観音発源記』によると、清の雍正3年(1725)、安渓県西坪鎮の松岩村松林頭に住む茶農・魏蔭は仏教の信仰が厚く、毎日、朝夕必ず3杯の清茶を観音像に供えていました。
ある夜、魏蔭は夢の中で観音様に教えられ、変わった茶樹を見るのです。翌朝、夢の中で見たような道を行く途中、石の岩壁の上で偶然、石の間に1株の茶樹を発見します。それはまさしく夢の中で観音様が教えてくれた茶樹だったのです。
その茶樹は、他のものとは違って素晴らしいものでした。魏蔭は喜んで試しに飲んでみると、香りも味も素晴らしく、茶樹はよく繁っていたので、家に持って帰り、心を込めて念入りに栽培しました。そして茶葉を摘んで製茶しました。すると、形・色・香り・味・余韻がともに最高級のものだったのです。
このお茶は、観音様からの授かりものであり、茶葉は鉄のように重かったので「鉄観音」と名付けられました。
この話は、鉄観音の由来として最も有名なものです。私は伝説の地を2度訪問しましたが、山の嵐気は素晴らしく、山中幽玄の趣がありました。
【ワンポイント・メモ】
鉄観音は、さまざまなランクがあり、味も香りも違います。烏竜茶の作法に従って淹れ、ゆっくりと聞香して香りを楽しんでください。高級な鉄観音は値段も高いのですが、心休まる至福のひとときを得ることが出来ます。
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棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。
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