発見された恐竜の卵の化石 
絶滅の謎解く手がかりに
 
                                                                                           于文=文・写真

  湖北省のウン県は山地が多い。その山の斜面で、丸い石の卵がよく発見される。石の卵は、岩石の中にあったり、地表に露出していたりしている。1990年代には、外部の人がわざわざ石の卵を買うためにやって来たので、当地の農民たちは、この丸い石が宝物かもしれないとようやく気付いた。

規模が大きく、保存もよい

ウン県の青竜山の上にある村落

  外部から来た人が大量の石の卵を買うことに、ウン県の政府は注目した。1995年、中国科学院の古生物学者がここへ来て、実地調査を行った。その結果、恐竜の卵の化石であることが判明したのである。

  恐竜の卵の化石群は、湖北省十堰市ウン県柳陂鎮の青竜山や紅寨子の一帯に分布している。面積は約10平方キロ。化石は主に後期白亜紀の地層のピンク色をした砂礫岩の中に分布していて、今から1億3500万年から6500万年までの間のものだ。形は主に卵形や球形、ラクビーボール形で、卵の殻の色は浅い褐色、深い褐色、薄い灰色の3種類に分けられる。卵の直径は10から18センチだ。

  2001年に、関係部門が恐竜の卵の化石に対して、さらに調査を行った。その結果、この地帯の地下に埋蔵されている恐竜の卵の化石は数万個、地表に露出したものは5000個余りあることが分かった。この中には、発掘前に流失した化石は含まれていない。

  この年、青竜山は国家クラスの自然保護区に指定された。専門家も重点地区で発掘を行い、大量の貴重な化石が相次いで出土した。2003年には、1つの穴の中から恐竜の卵の化石が61個掘り出された。これほど数が多く、保存状態が良いのは、世界的にも珍しい。

恐竜の卵の化石

  中国科学院の古生物学者・趙資奎さんはこう述べている。

  「人間が恐竜の卵の化石を研究し始めてからの歴史は、決して長くはありません。その主な原因は、化石の量が少なく、保存状態が良くなかったからです。しかしこの20年来、中国では、青竜山のような、量がきわめて多く、保存が完全な恐竜の化石群が各所で発見され、恐竜の卵の研究に豊富な材料を提供しました。中国は、世界でもっとも多くの恐竜の卵の化石をもつ国で、恐竜の卵に対する研究をリードする立場に立っていると言えます」

恐竜と卵がいっしょに見つかる

  常識的には、恐竜の卵がある所に恐竜もいなければならない。しかし、科学者は、研究の結果、恐竜は生活地域と産卵地域が分かれており、恐竜はすべて生活地域から遠く離れた辺鄙で安全な所まで行って卵を産む、ということを発見した。例えば、大量の恐竜の化石が発見された四川省自貢市は、現在までは、恐竜の卵の化石や産卵の跡はまったく発見されていない。

  ところが意外なことに、1997年に、ウン県の梅鋪李家溝村で恐竜の化石が発見された。当時、農産物のマーケットの建築現場から、多くの動物の骨格に似た石が掘り出され、現地の人々が専門家を呼んで、鑑定してもらったところ、これらの化石は恐竜の骨格であることがわかった。

ウン県の梅鋪李家溝村で発見された恐竜の化石

  梅鋪李家溝村は青竜山から76キロしか離れていない。同じ県の中で恐竜と卵の化石がいっしょに見つかったのは珍しいことである。

  「恐竜の骨格と卵の関係を研究することは、恐竜の生活習性や当時の地形、気候の特徴を解明することに役立つ。恐竜の卵の化石は、恐竜滅亡の謎を解く手がかりを提供しているのではないか」と、趙資奎さんは言っている。

  中国の南方の水を北方に引いて、北方の水不足に役立てるという「南水北調」の中線の工事(注)で、ウン県の大部分は水没することになっている。2010年から貯水を始め、丹江口ダムの水位を170メートルにまで上げると、青竜山の麓は湖に変貌する。だが、化石群はそれより少し上の所に分布しているから、あまり影響は受けない。

将来は「ジュラシックパーク」に

  ウン県の属している十堰市政府の広報係の王清さんは「現在の任務は化石の保護と研究ですが、将来はここに中国の『ジュラシックパーク』を建設するつもりです」と言う。

  2001年以来、ウン県政府は青竜山化石群管理処を立ち上げ、専門家を組織して重点区を中心に発掘している。同時に、恐竜と卵の化石の陳列室を開設し、保護柵を作って、化石の盗難を防止している。現在は、この地域の古い気候の特徴を分析し、恐竜の卵の化石層の位置や数、埋蔵の特徴を調べている。さらに風化と土石流から化石の破壊を守り、緊急の採集などを行っている。

  今年9月には、ウン県青竜山恐竜遺跡は湖北省国土資源庁によって国家地質公園として認可された。2006年には、青竜山自然保護区に、科学研究と観光が一体となった地質公園が建設される計画だ。公園の敷地面積は約2平方キロ、投資額は9800万元。現在の地形を変えないという前提で、植樹したり恐竜の模型を設置したりして、晩期白亜紀の環境を再現する。

化石の発掘の現場

  それができ上がれば、観光客は恐竜の世界に身を置いている感覚にとらわれることだろう。ウン県政府の広報係の李桂林さんは「われわれは恐竜の生活環境をそっくり再現して、観光客を引き寄せたい。しかし、もっともっと重要なのは、人々に自然のままの、本当の恐竜の卵の化石群を展示することです」と強調している。

  化石群のほか、青竜山の周囲には、梅鋪原人の遺跡、明代の儒家の学堂である大成殿、湖の景勝地など多くの観光地がある。国道205号線と県道が観光地と青竜山を結びつけている。ウン県には今まさに、1つの神秘的で美しい「太古の旅」の観光ルートが出現しようとしている。

【注】「南水北調」中線工事
  湖北省丹江口ダムから湖北、河南、河北、天津を経て北京まで水を引く工事。北京、天津などの20の大・中都市に飲用水を提供し、あわせて沿線の農業灌漑用水にも使う。中線工事の建築プロジェクトには、水源の工事や送水用水路の工事などが含まれている。総投資は約950億元。工事は2030年に完成する予定。



 
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