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北京動物園の前身は、清の光緒32年(1906)に建設された万牲園で、すでに百年の歴史がある |
都市のおすすめの場所といったら、公園や動物園、植物園だろう。都市のいたるところが鉄筋やコンクリートだらけになってしまったら、呼吸ができなくなってしまう。そこで、「オアシス」を必要とするのだが、大型の緑化広場やあちこちに点在する公園、植物園が、その「オアシス」となっている。
都市とは1つの有機体であり、公園や動物園、植物園はその「体」の1部といえる。人間は動物の1種で、大自然から生まれ、広い土地に長い時間をかけて都市を建設した。都市は人工の景観なのだ。そして時々、ジャングルの生活を思い出したり、新鮮な空気を吸ったりするために、動物園や公園、植物園を造った。
北京には北京動物園という有名な動物園がある。中国最大の動物園で、珍しい鳥獣が600種余り、合わせて6000匹(羽)以上いる。他にも、北旭野生動物楽園、ワニ湖公園、八達嶺クマ楽園、南海子シフゾウ(シカの1種)苑、亜運村(アジア大会の選手村)オリンピック体育センターの和平鳩広場などがある。こういった場所では、さまざまな動物を見ることができる。
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南海子シフゾウ苑(撮影・馮進) |
当然ながら、動物たちはおとなしくなっている。多くの野性的な部分をすでに失ってしまった人間と同じように、彼らも大自然との関係を隔絶されてしまったからだ。
私たちは、身近に植物がある生活を好む。都市では、ほとんどの家で鉢植えを育てている。植物は、光合成によって人間が必要とする酸素を放出できるので、日増しに深刻になる大気汚染の中で生活している都市の人々は、植物を身近に置きたいのだ。北京の北西部にある北京植物園は、4500種余りの植物が栽培されている中国北部最大の植物園である。
市の南西部には、北京花卉芸術センターがある。ここの主な事業は「鏡花縁」と呼ばれる1年中花卉を展示・販売する芸術展覧館だ。建物は中国文学の名著『鏡花縁』の世界をモデルに改築され、40カ所の景観スポットが設けられている。
東三環路の三元橋を東へ向かうと、莱太花卉交易センターがある。ここは国際的な花卉取引センターだ。世界各地から運ばれてきたさまざまな花卉が、色とりどりに咲き乱れている。私は以前、ここでフィンランド産の植物を買った。名前は忘れてしまったが、その植物が放つ香りはどんな香水にも勝り、少なくとも私にとっては、この上ないものだった。
北京の市街地には、30以上の公園が点在している。中国の都市の中でもっとも多い。昔からある中山公園、メテ和園、北海公園、円明園などの皇室園林や玉淵潭公園、紫竹院公園、陶然亭公園などの市民公園、そして双秀公園、団結湖公園などの社区(コミュニティー)公園や朝陽公園、石景山遊楽場などの現代的なアミューズメントパークもある。
都市に公園を造るのは、文化的な考えによる。都市はいかなる部分にもヒューマニティーが必要で、公園はこのヒューマニティーを体現しているのだ。それは私たちの生活に温かみと平和をもたらした。
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西山の山麓にある北京植物園 |
1部の中・小都市は、都市全体を公園化、緑地化しようとしている。大連市や珠海市のように、その努力が成功している例もあるが、北京のような巨大都市をすべて公園化、緑地化するのはほとんど不可能だろう。北京の普通でない大きさは、毎日通勤する人々や清掃員たちにたいへんな苦労を与えている。
人間は大自然を身近に感じることが好きだ。心の奥底では、自分たちが建設したコンクリートジャングルを好んではいないのかもしれない。大自然の思い出を大切に持ちつづけなければならないのだ。
人工的な動物園や植物園、公園は、永遠に真の大自然にはなれない。都市の生活を自然に近づけるために造った園林は、完璧とはいえず、自然界を凝縮した盆栽にすぎないのだ。そうはいっても、人工的な自然は、高層ビルの間を忙しく行き来し、熾烈な競争の中でくたくたに疲れている都市の人々に喜びを与えている。動物園や植物園、公園で見かける人々のほとんどは、楽しげで幸せそうだ。
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