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4億人を熱狂させた 視聴者参加番組
                                                                                               高原=文

李宇春さん
 去年の年末に終了した『超級女声』のオーディション番組は、2005年、中国国内で最も人気を博し、注目を集めた娯楽番組であった。この番組の影響力は大きく、熱狂的な論議を巻き起こした。主催者自身も予想外だったに違いないが、一体どこに魅力があったのだろうか。

 『超級女声』のオーディションは2004年に始まり、第2回を迎えた2005年のオーディションは、最初に広州、成都、長沙、鄭州、杭州の5カ所に分かれて行われた。これが、大きな反響を呼ぶことになった。

 このオーディションは、歌うことが好きな女性であれば、年齢、職種を問わずだれでも参加できる。参加者は第1次予選を経て、まず50人が選抜される。数回の勝ち抜き選を通過した後、各地区で選ばれた3人が決勝戦に参加し、最終的に今年度の優勝者が決まる。

中性的アイドルの魅力

 『超級女声』の熱心な視聴者は、参加者のありのままの演技が見られる、第1次予選の生中継を好んだ。特に、彼女らのおかしくて笑いを誘う演技は、視聴者にとても好評だった。『超級女声』は、今までの真剣で型にはまったオーディション番組と違い、参加した人たちの「生」の姿を映し出した。

 今期の『超級女声』でひときわ注目を浴びたのは、中性的なアイドルの誕生だった。その中の代表が、優勝した李宇春さんだ。22歳の李宇春さんは、四川音楽学院の4年生。細身で長身、声は低く、オーディションではダンディーな男装で視聴者を魅了し、最終的に400万票を獲得し優勝した。

『超級女声』の受賞者。右は李宇春さん

 『超級女声』のオーディションには3人の審査員がいるが、あくまでも番組を楽しんでいる視聴者の意見の上に立っており、選抜結果も、視聴者のショートメールの投票によって決められる。そういう意味で、今期優勝した李宇春さんは、中国大陸で初めて生まれた「民選アイドル」と言えるだろう。

 今回高得票で優勝した李宇春さんに、多くの評論家は驚いた。以前のオーディション番組では、女性らしい甘く、セクシーなイメージが漂っていたが、今回のオーディションで、李宇春のような中性的なアイドルが高い人気を得、同じようなタイプの参加者が多かったのは、本当に予想外であった。

 そして興味深いのは、李宇春さんのファンのほとんどが女性であることだ。彼女たちは、李宇春さんの中性的で、自立した、自信のある姿に、理想の自分を重ねたのかも知れない。

競争時代を迎えたテレビ局

街頭で票集めをする李宇春のファンたち

 李宇春さんは優勝を手にしたが、今期の『超級女声』で最も利益を得たのは、主催者である湖南衛星テレビだろう。

 1997年から湖南衛星テレビは、『愉快なベースキャンプ(快楽大本営)』(タレントたちのバラエティー番組)、『バラの約束(バイ瑰之約)』(お見合い番組)など、いくつかのバラエティー番組を放送してきた。湖南衛星テレビは、常に中国人の娯楽番組の認識を変え、2005年にはこれまでにない人気の絶頂に達した。

 『超級女声』のオーディションは、2005年度最も人気のあった番組で、その影響も全国に及んだ。オーディション決勝戦の生中継では、約4億人の人がテレビを見、その視聴率、ショートメールの投票率、広告価格とも、中央テレビ局の同様の番組をはるかに超えた。また中央テレビ局と放送権を奪い合った『宮廷女官 チャングムの誓い』(韓国ドラマ)でも、湖南衛星テレビが勝ち取った。

 長い間、質が高く人気のあった番組は中央テレビ局に集まっていたが、こうした傾向は最近、変わってきた。湖南衛星テレビは、中央テレビ局が独占してきた今までの状況を打破したことは間違いない。湖南衛星テレビなど、地方のテレビ局の影響力が大きくなるに従って、中央テレビ局も今だかつてなかった競争のプレッシャーにさらされているだろう。




 
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