現在、中国で『2匹の蝶々』という歌が大ヒットしている。インターネットを通じて流行った曲の代表作となっているこの歌は、軽快で覚えやすいメロディーで、多くの人々を魅了した。歌手のホウ龍は、この歌のおかげで、一躍、スターの座にかけ登った。
『2匹の蝶々』は、若年層だけでなくあらゆる年齢層に人気がある。そのため、権利侵害の標的にもなった。「超級女声」(スーパー歌姫)の一人である邵雨涵がリリースした『私は超級女声だ』というアルバムには、『2匹の蝶々』が収録されている。
「超級女声」は、本誌1月号で紹介されているように、湖南衛星テレビが放送したオーディション番組で、若い世代を中心に爆発的な人気を呼んだ。2004年にスタートした第1回大会には、全国の女性約6万人が応募。2005年5月からの第2回には15万人が参加したという。
視聴者は、携帯電話で、自分が好きな選手の番号をショートメールで送る。得票数が一番多い選手が次の試合に進むことができる。私の親戚の孫娘は、まだ5歳なのに、決勝の日に、彼女のアイドルである周筆暢に投票しろと、一家全員に命令した。
結局、約4億人といわれる視聴者が見守る中、中性的な雰囲気を漂わせた21歳の音楽学院の学生、李宇春が、投票総数は800万票のうちの350万票を得てチャンピオンになった。周筆暢は2位だった。
『私は超級女声だ』の邵雨涵は、実は予選で落選したスーパー歌姫なのだが、『2匹の蝶々』の著作権者である鳥人芸術推広有限公司の許可なくこの曲を収録したため、同公司はアルバムの発行者を相手取り、20万元の損害賠償を求めて訴訟を起こした。
それとは別に、同公司は、やはり無断で『2匹の蝶々』を携帯電話の着信メロディーに製作し、ユーザーにダウンロードさせた北京万訊通有限公司に対しても、400万元の損害賠償を要求した。
この2つの訴訟とも、同じ曲の著作権侵害の事件なのに、損害額の算定になぜそれほど差がつくのだろうか。
賠償額の算定は、知的財産権侵害訴訟事件における重要な問題点の1つである。他の知的財産権侵害事件と同じように、著作権侵害事件の損害額の算定も・権利を侵害した者が侵害した期間に、侵害により獲得した利益・侵害期間に被害者が被った損失――のいずれかを基準として算定するのが普通である。
しかし、損害額の確定が困難な際には、商標法や特許法と同様に、著作権法においても、2001年の改正により、人民法院が情状に応じて50万元以下で損害額を確定するという「法定賠償金」制度が導入されている。
原告の公司は2つの事件で、相手方の利益額等を調査した結果、北京万訊通有限公司は『2匹の蝶々』の着信メロディーを提供することによって取得した利益を約200万元と算定した。これに対して、「超級女声」の邵雨涵のアルバムの発行会社がその発行により取得した利益や原告がそれにより被った損失は算定できなかったため、「法定賠償金」制度に基づいて、50万元の範囲内で損害賠償額の20万元の支払いを請求することにしたのだ。
もちろん、侵害により獲得した利益、または被害者が被った損失のいずれかを基準に損害賠償額を算定し、請求するときには、それを証明する証拠を提出する必要がある。その立証ができない場合、人民法院は、合理的な金額が算定できないと判断し、「法定賠償金」制度により、中国の物価、被告の経営状況などを踏まえて、「法定賠償金」の範囲内で損害賠償額を決めることになるのである。
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