河北省の農民である劉さんは、北京に出稼ぎに来て6年ほど経つ。農業税廃止の知らせを聞いてまず考えたのは、田舎へ帰って農作業をすることだった。そして、劉さんはこう言う。
「出稼ぎはつらいばかりで、それほどの稼ぎにもならないし、家のことを顧みるひまもない。でも農業税が廃止されれば、農作業で得たものは全て自分のもので、豊かになることだってできる。これでやっと、お金を稼ぐためにあちこちさすらわなくてもすむんだ」
2005年12月29日、第10期全国人民代表大会常務委員会第19回会議で、2006年1月1日から『農業税条例』の廃止が、高い賛成率で採択された。これは2600年続いてきた中国の農業税制が、正式に過去のものになったことを意味する。
新中国の『農業税条例』は、1958年に施行されたが、この半世紀近くの間、中国の経済や社会の状況は大きな変化を遂げた。比較的整った工業体系が築き上げられると同時に、農業と工業、農村と都市の格差は次第に広がり、「三農」(農業、農村、農民)問題は依然として、中国の経済と社会の発展の足かせになっている。
農民の負担を減らすために、2000年、安徽省では、税費改革が試みられ、次第に全国各省に推し進められた。2004年、中国政府は、農民に対する優遇政策である、農業税の減免を実施し始めた。農業部の示すデータによると、2004年には農業税の減免で、全国の農民は302億元の増収を実現し、2005年に、予定より早く農業税の免除を実現した28省の全域と、河北、山東、雲南の3省の1部の県(市)では、農民の負担が220億元軽減され、約8億の農民が実質的な恩恵を受けた。
今までの統計によると、2006年の全面的な農業税廃止以降、農民の負担は大幅に減ると予測されている。農業税費改革前の1999年と比較すると、毎年、全国の農民の農業税減免総額は1000億元を超え、農民1人当たりにすると120元になる。
農業税の全面撤廃は、政府が農民と農村の発展を重視、支持することの具体的な現れであり、都市と農村の格差をなくすための大切な一歩である。これは、農民の負担を減らすだけでなく、中国は、都市が農村の恩に報いる時代に入ったことも示している。
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