黄茶の製茶法は緑茶とほぼ同じですが、悶黄という特別作業が行われます。この悶黄で緑茶と区別するのです。緑茶は発酵させませんが、黄茶は発酵させるということです。
黄茶は茶葉の鮮度と大きさによって、黄芽茶、黄小茶、黄大茶とに分けられます。黄芽茶には君山銀針(湖南省)、蒙頂黄芽(四川省)、霍山黄芽(安徽省)があります。中でも君山銀針は最も有名です。
★君山銀針
君山銀針は、唐、宋代には形が鳥の羽に似るので黄レイ毛、白鶴レイと呼ばれていました。清代に白色の産毛があるので白毛尖と呼ばれ、1957年に君山銀針と命名されました。
君山銀針は湖南省岳陽市洞庭湖の君山で生産されます。
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君山銀針の茶畑 |
君山での茶葉製造の歴史は長く、『巴陵県志』に「湖南省洞庭湖の君山ではお茶が取れ、若い芽は蓮の芯に似ている。毎年、皇帝への貢ぎ物とした。……唐代に盛んに生産されたが、献上の始まりは五代からである」という記述があります。清代の乾隆帝が江南に行幸した時に君山茶を飲み、年に18斤(9キロ)献上するように命じています。
君山銀針は現在、年に500キロ程度しか製造できないので、値段が非常に高く入手が難しいようです。
君山銀針は清の時代に献上品となりました。『巴陵県志』の記載によると「君山貢茶は清代から、毎年18斤を献上するようになり、穀雨の前に、長官が僧侶に新芽の尖端の一芯一葉を採取してもらっています。白い毛が密生しているので、「白毛茶」と俗称されていますが、清代の君山銀針は「老君茶」とも呼ばれました。
『紅楼夢』の41巻、「リョウ翠庵茶品梅花雪」の中で妙玉が賈母にお茶を淹れました。すると賈母は「六安茶は飲まないよ」と言ったのです。妙玉は笑いながら「知っているわ、これは老君眉よ」と返事をしています。その老君眉こそ今日の君山銀針なのです。
君山銀針は芽の大きさは均等で、黄金色であり、白い毛が銀針のように見えます。茶湯は明るいオレンジ色で、爽やかな香りがあり、透明なガラスコップで君山銀針を淹れると、最初は芽先が上向きに表面に浮きますが、暫くするとゆっくりとコップの底に沈んでいきます。また浮いたり、沈んだり、多いときは三回往復します。そのため、君山銀針は「三起三落」と言われ、最後に茶葉がみな底に沈み、刀や槍が林立したように見えるのです。飲むことはいうまでもなく、観賞するだけでも人々を夢中させるお茶と言えるでしょう。
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