▽昨年の弊誌12月号の特集で、誕生百年を迎えた中国映画について、これからコメディーの大量登場、「人民による映画」の出現などいくつかの傾向が見られるだろうと大胆に予測しましたが、それはすでに部分的に、現実となりつつあります。その代表的な事件として、いま話題になっている映画『無極(日本語題=プロミス)』を茶化したネット作品『饅頭が引き起こした殺人事件』による騒ぎ(5月号に報道予定)があげられます。
▽映画界だけでなく、エンターテインメント界全体にも同じ傾向が見られます。今月号の特集「若者がハマるフラッシュアニメ」は、いまフラッシュアニメにハマっている中国の若者の実態やその理由をさぐり、中国の大衆娯楽にとって、個人製作の作品の持つ今後の可能性を分析しました。また、「カルチャー&エンターテインメント」では、いま中国でパロディーを特徴とするコメディーの人気度や人気獲得の理由を分析しています。これらがネット作品による騒ぎの背景理解に役立てばと思います。
▽海外の方々が映画を通して中国を読むとき、田園情緒のオリエンタリズム的な想像に陥ってしまう場合があります。日本における『山の郵便配達』の大ヒットは今も記憶に新しいのですが、今月号で紹介している現実の世界の「山の郵便配達」の話を読んだあと、映画とは違う感動を覚えるかもしれません。唯一のパートナーである馬と、横断山脈の中を年中寂しく往復する王順友さんの話は、もしかしたら昔の日本映画『喜びも悲しみも幾歳月』を連想させるでしょうか。(編集長 王衆一)
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