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外資誘致を牽引する開発区 |
青島には、経済技術開発区、保税区、輸出加工区、ハイテク産業開発区といった国家級の開発区、および6つの省級の経済技術開発区が設置されている。国家級の開発区の種類がこれだけそろった都市は数少ない。今回は経済技術開発区、保税区、輸出加工区の3つを中心に紹介しよう。
◇青島経済技術開発区
市街区から膠州湾高速道路を走ること50分。左手に海を見ながら、膠州湾をほぼ一周すると「黄島区」に着く。青島経済技術開発区は、市街区と海を隔てて向かい合っているこの地区にある。全区の総面積は274平方キロ、44万人が生活する。 大港湾、大工業、特色のある観光 工場がびっしりと建ち並び、息が詰まるような非人間的な空間。生命を感じさせるものは少なく、ただただシステマチックに動いている。開発区に対してこんなイメージを抱いている人は、青島経済技術開発区に入って驚くことだろう。 緑化率40%以上という数値が示すとおり、緑が多く、自然の息吹が感じられる。海と山に囲まれ、風光明媚な場所も多い。南部に広がる金沙灘ビーチには、海水浴の季節ではなかったので人影は多くはなかったが、のんびりと散歩を楽しむ人々があちらこちらにいた。青島の海水浴というと、市街区にあるビーチが有名で、多くの観光客はそちらへ行く。しかし金沙灘ビーチも負けず劣らず。やわらかい砂と美しい海水が魅力で、通はこちらで泳ぐのだと、同区に住む人が教えてくれた。 この金沙灘ビーチを含む区域は、薛家島観光・レジャーエリアとして一大観光区が建設されている。黄海に突き出たこの半島は、鳳凰が羽を広げたようなかたちをしているため、かつては「鳳凰島」と呼ばれていた。数々のビーチと小島があり、スポーツ施設やレジャーランドなどが設置されている。
開発区でありながら、このように充実した観光エリアがあるのは、経済技術開発区が「大港湾、大工業、特色のある観光」を重点に経済発展を進めているためだ。 区内には、1987年に建設が始まった青島新港――前湾港がある。2002年、市政府が打ち出した「経済発展の重点を西の方に移す」という発展戦略のもと、青島港の対外貿易コンテナ業務がすべて前湾港に移された。現在、中国北方の国際的な運輸・物流ターミナルとして建設が進められている。 また、家電・電子、石油化学工業、機械製造という三大基地の建設に力を注ぎ、家電・電子、石油化学工業、機械製造、新型素材、ハイテク、倉庫物流の六大産業を発展させている。経済成長率は10年連続30%前後の伸びで、05年は前年比28.2%増の372億元を達成した。海外からの投資もますます盛んになっており、外資プロジェクト数は1935件、投資総額は実行ベースで50億3000万ドルにのぼる。 日系企業を重視 経済技術開発区は設立以来、対日誘致を非常に重視し、日本企業と良好な協力関係を築いてきた。05年末現在、日本の投資プロジェクトは合わせて188件に達し、外資プロジェクト全体の9.7%を占める。投資総額は契約ベースで9億3000万ドル、実行ベースで6億6000万ドル、それぞれ全体の9.5%、13.1%だ。 馬衛剛・経済技術開発区工作委員会副書記は、「日本からの投資は、安定して増加し続けています。05年のプロジェクト数は33件、投資総額は契約ベースで1億8000万ドル、実行ベースで8661万ドルでした。進出してくる日本企業の技術力は総じて高く、創造力に長けているため、我々は非常に重視しています」と話す。 日立空調システムは03年1月、ハイセンスとの合弁で、業務用エアコンの製造・販売会社、海信日立空調系統有限公司を設立した。生産工場を青島に構えたのは、合弁パートナーであるハイセンスの本拠地であることと青島市の投資環境がいいからである。
同社が製造している業務用エアコンは「HITACHI」のブランド名で販売している。「HITACHI」は中国でも名高いが、業務用エアコンとしての知名度は低かったため、営業活動に多大なる資源を投入するとともに高機能、良品質の製品を市場に投入した。その結果、「HITACHI」ブランドがだんだん浸透し、市場で品質が良いと評価され、05年の売り上げは前年の2倍となった。今年は設備投資をし、生産能力を向上させる予定だ。 溶接機メーカー最大手の株式会社ダイヘン(海外ブランドは「OTC(欧地希)」)は、急速に発展する中国を中心としたアジアでの溶接ニーズに対応した高性能機種の品揃えと将来の供給増強に対応するために、中国2番目の生産拠点として青島を選び、03年4月にOTC機電(青島)有限公司を設立した。 ダイヘンはこれまでに黒竜江省牡丹江市に生産会社「牡丹江OTC溶接機有限公司」を、上海に販売会社「OTC機電(上海)有限公司」を設立しているが、青島の優れた投資環境の良さ、人材・材料の確保と輸出入を含めた物流交通の優位性が、中国2番目の生産拠点を青島に構える決め手となった。 OTC機電(青島)有限公司は主にインバータ制御高性能アーク溶接機、インバータ制御高性能プラズマ切断機などを生産している。04年の操業以来、生産量は絶えず増加し、従業員も当初の20人から150人に増え、すでに月産1000台体制を築いた。これまでの投資総額は270万ドルにのぼる。 ますます整う生活環境
経済技術開発区には現在、約150人の日本人が住んでいる。昨年末、区内にジャスコがオープンした。日本の食品を専門に販売するコーナーや日本料理屋も設置されている。これまでのように市街区にあるジャスコまで買い物に行く必要がなくなり、非常に便利になったと、ここで暮らす人々は口々に言う。近々、ゴルフ場もオープンする予定だ。 市街区からのアクセスも便利になる。これまで、海上はフェリー及び高速船(それぞれ市街区まで30分、12分)で結ばれていたが、そこに湾を跨ぐ大橋と海底トンネルが加わる。大橋の建設は05年6月に着工しており、海底トンネルも今年6月には着工する見込み。これにより、経済技術開発区の経済がより発展することはもちろん、同区に住む人々がますます生活しやすくなることは間違いない。 ◇青島保税区 経済技術開発区の黄島前湾に面した一角、ここに保税区が設置されている。総面積は3.8平方キロ。山東省および黄河流域で唯一の保税区として、その果たす役割は大きい。 周到なサービス 「保税区は、私たち進出企業をお客様と呼び、『お客様のために』というスローガンがあるくらいサービス精神が旺盛です。物流に対する理解があり、材料や製品の輸出入のスピードが非常に速い」と語るのは青島松下電子部品(保税区)有限公司の佐藤義行総経理だ。
松下電器産業株式会社とパナソニック・エレクトロニック・デバイス株式会社は1993年、青島の電子部品工場と共同で、経済技術開発区に青島松下電子部品有限公司を設立した。AV機器用のスイッチの生産からスタートしたが、その後、情報通信の分野が急速に発展した。そこで、保税区の優遇策を生かして、市場のさらなる拡大と生産増加を目指そうと、97年、保税区内に青島松下電子部品(保税区)有限公司を設立した。 現在、輸出・間接輸出が70%を超えている。主力は情報通信の分野、つまり携帯電話を中心とした部品。中国の携帯電話に用いられているスイッチユニットの3分の1は同社の製品だという。本格生産を開始した94年の時点では71人だった従業員が、現在は4200人になり、年商は700万元から14億元に増えた。今年は16億元を狙う。自動車の電装分野への展開も進めている。 保税区には現在、40以上の国や地域、そして中国国内の企業が進出しており、投資プロジェクトは2000件余りに及ぶ。このうち外資系企業は約千社、投資総額は16億ドルだ。日系企業は05年12月時点で、69社、そのうち生産型企業が33社、貿易型が27社、物流型が9社となっている。 プラグメーカーの株式会社茂治は1996年、マレーシアに次ぐ海外2番目の生産拠点として青島茂治電子有限公司を設立した。主に携帯電話用のプラグやゲーム機用のケーブルアセンブリを生産する。同社がここに進出した大きな理由は、主な取引先のミツミ電機が青島に生産拠点を構えており、製品をすぐに供給できる体制を作る必要があったからだ。 05年の売り上げは、設立から10年間の中で2番目の10億円だった。青島は最近、日本や韓国を中心に、海外企業の進出が急増している。そこで、外資系企業との取引も積極的に増やしていこうと考えている。 進む「区港連動」
05年11月、保税区内の物流園区の運営が正式に始まった。 物流園区とは、「区港連動」(保税区と港湾の連動)を体現するため、保税区と港湾の機能を一体化させた区域のこと。主な機能は―― (一)国際接続運送 区内に入ってきた国内外の貨物を、デバンニング(コンテナから取り出す)またはバンニング(コンテナに詰め込む)して目的港に転送する。
保税区と同じように輸入関税と、区内の流通における増値税や消費税が免除されるのに加え、輸出加工区と同じように貨物が区内に搬入された時点で輸出とみなされるため、直ちに増値税の還付が受けられる。 ◇青島輸出加工区 市街区から黄島区までを湾沿いに走る膠州湾高速道路。その中間あたりに青島輸出加工区は設置されている。敷地内にはまだ発展の余地が残る。 操業まで1カ月 昼食時、工員たちが廊下へ出てきて、食堂の前に並び始めた。今まで作業をしていた真剣な表情とは打って変わり、リラックスしたムードでおしゃべりしている。中庭には新しい設備が山積みになっていた。 電子部品メーカーのホシデン株式会社は2005年7月、ここ輸出加工区に星電高科技(青島)有限公司を設立した。
「給料も徐々にアップしているし、ここでの仕事には満足しています」。こう語るのは、チームリーダーとして生産管理を担当する劉相彩さん(31歳)。劉さんはもともと、青島市李滄区にある青島星電電子有限公司で働いていたが、星電高科技の設立と同時にこちらへ移ってきた。ホシデンの生産拠点で働いてもう11年になる。当初600元だった月給も今では2000元近くになった。現在は輸出加工区内にある会社のアパートで暮らしているので、家族とは離れ離れの生活だ。夫と4歳になる子どもは黄島区に住んでいるので、週末には会いに行く。「家族と会うのが一番の楽しみです」と顔をほころばせる。 星電高科技は設立から1カ月後の8月にはすでに操業を始めるという、驚くべきスピードで生産をスタートした。主力製品は携帯電話用のイヤホンマイクで、ノキアなどを主な取引先に持つ。現在も操業のかたわら、着々と工場の設備を整えており、4月にはほぼ完全な形で生産を行えるようになるという。 優れた立地条件を武器に 輸出加工区の特筆すべき優位性はその立地条件だ。膠州湾の中央に位置し、東は市街地、青島港、青島空港に、西は経済技術開発区、前湾港につながる。すぐ近くを膠州湾高速道路が走り、空港までは15分、市街地までは40分、港までは30分という距離。市街区と黄島区をつなぐ重要な地にあるのだ。 区内には税関があり、先進的な通関手続きシステムを保有している。加工貿易の管理手続きを簡略化し、「一回申告、一回審査、一回検査」という速くて便利な通関サービスを提供する。これにより、通常より大幅に通関時間を短縮している。
投資誘致は、精密機械、電子情報、新型素材、精密化学工業などのプロジェクトを優先に、投資規模が大きく、技術レベルの高い、輸出中心の有力企業を重点としている。これまでのところ20社以上の外資系企業が設立されており、そのうち日系企業は4社。同区初の外資系企業は、日本のゼネラル株式会社が2004年11月に設立した青島尖能弁公用品有限公司で、カーボン紙などオフィス用品の開発や生産、販売を行っている。設立式には、夏耕市長をはじめとする青島市の指導者たちも出席した。 設立されて間もない輸出加工区は、今後の発展が期待される。3〜5年の間に、核心区、周辺産業区、放射状推進区、生活サービス区が「四位一体」となって連動する、開発モデルが形成される予定だ。そして8〜10年の間に、輸出加工区とその周辺区域は、環膠州湾産業地帯となり、中日韓自由貿易の加工製造基地としての機能を果たしていくという。 中国の開発区概況 開発区とは、改革開放政策のもと、外資誘致を目的として各種の優遇策が実施される区域をいう。国務院が批准する国家級の開発区は、「経済技術開発区」や「保税区」など数種類あり、それぞれ目的に応じて優遇策が異なる。このほか「省級」以下の開発区もある。 |
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