深遠な国茶の世界P
棚橋篁峰
 
 
年を経るほどまろやかに
黒茶A

 

 今回は、プーアル茶を紹介します。

プーアル茶
 
 雲南プーアル茶は、雲南省シーサンパンナダイ族自治州を中心に生産されています。現在、モウ海県モウ海茶場の生産量が一番多く、プーアル茶生産量の70%を占めています。茶樹は喬木型大葉種で、ほとんど瀾滄江(メコン川上流)西岸の丘陵地帯に生長しています。

 このあたりの年平均気温は摂氏18〜20度です。冬春にも霜がなく、年平均降水量は1000〜1600ミリ、相対湿度は80〜92%で、1年中雲霧に包まれています。日照時間が短く、紫外線が強い場所です。

プーアル茶の故郷、モウ海茶場

 四季の温度差は小さいのですが、昼夜の温度差は大きいため、大葉茶樹は芽生えが早く、若芽が長持ちします。茶葉は大きく、産毛が多いため柔らかく、新鮮なものは水分を多く含んでいます。

 新鮮な茶葉で製茶したプーアル茶を圧縮した団茶は、形によって七子餅茶、沱茶、方形茶などとも呼ばれ、馥郁たる香りです。茶湯は赤黄色、芳醇で甘い味があります。

 散茶は外形が大きく、しっかりとしていて、光沢ある烏色(黒)と褐紅色(黒みを帯びた赤)があります。茶湯は透明の濃い赤色、芳醇で後味が甘く、特殊な陳香(年代物の香り)があります。貯蔵すればするほど香りがよくなるものなのです。

 プーアル茶には医薬効果もあります。清代の趙学敏が書いた『本草綱目拾遺』には「プーアル茶の清らかな香りは独特のものである。酒を醒ますのによく、消化不良を治し、胃を健康に保つその効果は、大なるものがある」という記録があります。プーアル茶は昔からコレステロールの抑制、消化、殺菌、ダイエットに効用があることが分かります。

 また、『紅楼夢』の63巻にはこんなエピソードがあります。

 賈宝玉の誕生日に、襲人、晴ブンなどが怡紅院で夜宴を開きました。林之孝の夫人が夜回りをしたところ、賈宝玉は「今日は麺を食べて、消化が良くないので、もう少し遊ぶ」と嘘をつきました。林之孝の夫人は襲人にプーアル茶を淹れて飲ませてあげなさいと教えました。

 この時代の人々は、既にプーアル茶の消化効用を知っていたのでしょう。

【ワンポイント・メモ】
 プーアル茶は美容と健康に良く、脂肪分を分解するのでダイエットに効果があると人気です。ただし、よく効きますので、濃くしすぎたり飲み過ぎたりしないように注意してください。
棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

 
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