北京ウォッチングP 邱華棟=文 劉世昭=写真
 
駅よりドライな空港
 
 
 
北京首都国際空港の第二旅客ターミナル。年間3500万人が利用できる

 北京首都国際空港には、上海の浦東国際空港に匹敵する国内で最も大きく最も美しい第2旅客ターミナルがすでにある。このダンベル型の全天候型飛行場は1999年にオープンし、年間3500万人の旅客が利用できる空港となった。しかしこれは2005年以前の需要しか満たせず、今後も引き続き拡張する予定である。

 現在の北京空港の規模は香港国際空港の半分にすぎないうえ、北京の国際化と影響力は急速に高まっているため、相次いで拡張する必要があるのだ。

 最近の情報によると、第3旅客ターミナルの建設はすでに始まっている。07年の竣工後、北京空港は年間6000万人が利用できる、国際ハブ空港となるだろう。

 「空港」という概念は飛行場より大きい。空港は飛行場のホテルや倉庫、道路、橋、管制塔などの設備も含む。都市にとって、空港は駅と同じように表玄関であり、出発や到着の地である。ただ、空港のほうがより美しく、よりあわただしい。

 空港に近づくと、飛行機が離着陸する音やエンジンの巨大な轟きが聞こえてくる。空港は仕事量が多いため、まるで蜂の巣をつついたようにごたごたしていて、あちこちで人々が行き交う物音がする。

北京首都国際空港はすでに需要を満たすことができず、拡張が続いている

 飛行機が地上にとどまっているのは短時間だ。大空は鳥たちを呼ぶように飛行機を誘っている。飛行機は離陸すると、まるで雲よりも軽くなったように、雲よりも高いところへ飛んでいく。このとき、飛行機のお腹の中では、乗客が眠ったり、おしゃべりをしたり、物思いにふけったり、食事をしたりし、ほとんどの人の心は、すでに到着地に降り立っている。同じように、自分の家族や友人、恋人を迎える側も、彼らの到着を心から楽しみにしている。

 空港は流れ作業である。各場所へ旅立つために、立ったり座ったりして列を成している人々は、まるで製造機に入れられるのを待つソーセージのタネのようだ。各通路は、人々を待合室や搭乗口へ導き、それぞれの場所へ送り届ける。

 人々の表情には様々な思いが秘められている。心には想像する場景がさっと浮かび上がっているのだろう。飛行機はあっという間に新しい目的地へと運んでくれるのだから。飛行機は、旅立つ人々に安心感を与えてくれる。

 駐機場にはたくさんの飛行機が静かに佇んでいる。周りには木々もない。彼らはオイル補給や洗浄を待ち、そして再び飛び立って、白い雲をいくつも通り抜けるのだ。

 広々とした大空から飛行機が一機、降りてきた。私はこのとき、突然、ある種の感動を覚えた。飛行機が空から下りてくるのを、大地が迎え入れているようだと気づいたからである。母親が遠くから帰ってきた子どもを迎え入れるのと同じように、大地は飛行機を迎え入れるのだ。

2005年1月29日午前11時40分、北京首都国際空港に着陸する、初めての台湾地区からの中華航空フライト便

 私はこのとき、飛行機は大地の子であることを意識した。鉱山から掘り出された鉄やアルミなどの金属的なにおいまで感じた。そして、わけが分からない衝動にかられた。私が飛行場を去ったあと、大地は再び飛行機と人々を大空に送り出し続けるのだと知ったからである。

 空港についてこんなふうに描くのは、少々文学的すぎるかもしれない。今日の都市と都市、国と国、省と省を結ぶ、最も頻繁で最も便利な交通手段はもちろん、空飛ぶ道具――飛行機である。

 農業社会では、婚姻は一般的に25キロの圏内に限られていた。しかし今日の都市では、数千キロ離れた人とも恋愛できる。外に出るということは、すべての都市人が行う活動で、出張や訪問、旅行などの際、多くの人は飛行機に乗る。

 どうしてだかわからないが、センチメンタルさは、駅より空港のほうが軽いような気がする。駅で出発の汽笛を聞くと、目から涙があふれ出るが、空港での見送りは、いささかおめでたいムードがある。つまり、飛行機はあっという間に大地へ戻ってくるが、汽車はひたむきに前へ進むイメージがあるのだ。

 駅と空港。一つは古典的であり、一つは現代的である。見送る人々の表情からも、その違いが見てとれる。


 
 
邱華棟 1969年新疆生まれ。雑誌『青年文学』の執行編集長、北京作家協会理事。16歳から作品を発表。主な著書に長編小説『夏天的禁忌(夏の禁忌)』『夜晩的諾言(夜の約束)』など。他にも中・短編小説、散文、詩歌などを精力的に執筆し、これまでに発表した作品は、合わせて400万字以上に及ぶ。作品の一部は、フランス語、ドイツ語、日本語、 リ国語、英語に翻訳され海外でも出版されている。  
 

 
本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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