深遠な国茶の世界R
棚橋篁峰
 
 
茶葉と花の香りが一体に
花茶

 
ジャスミンの花

 花茶は、またの名を薫花茶、香花茶、香片ともいいます。日本で多く知られているのは、ジャスミン茶(茉莉花茶)だと思います。花茶は緑茶、紅茶、烏龍茶などに花の香りを含ませ、二次加工をおこなって飲むお茶のことです。ですから、香りのある花を原料として花の香りを茶に含ませるようにします。これをインといいます。

 使用される花の品種によって、茉莉花茶、玉蘭花茶、珠蘭花茶などがあり、なかでも茉莉花茶の生産量が最も多いのです。

 花茶は集められた茶葉と花の香りが一体となったもので、互いに影響し合います。茶は花の香りを引き出し、花は茶の味を引き立たせます。爽やかな口当たりの茶の味に、更に濃厚馥郁で鮮烈な芳しい花の香りを持つことが出来るようになるのです。

 花茶は茶の基本的な味わいを少しも損なうことはなく、かつ花の香りはとても良い薬効を持っているので、健康に良い作用があります。

 花茶を淹れて飲むと、花の芳しく甘い香りが口の中いっぱいに広がり、同時に、精神が安定して落ち着いてきます。

 中国の花茶の生産は、南宋時代に始まり、今日まで800年余りの歴史を持っています。最も初期の段階で花茶生産の中心地となったのは、福建省の福州でした。12世紀に始まった花茶の生産と花の香りを茶に移す技術は、徐々に蘇州や杭州一帯に広がりました。

 明代の銭椿年の『茶譜』(1539)に花茶についての記述があります。それによれば、「木犀、茉莉、薔薇、蘭、橘、梔、木香、梅など、多くの花茶を作ることが出来る」と記述されています。大規模な花茶の生産は清代の咸豊年間(1851〜1861)に始まり、1890年代にいたって全国的に広がりました。

 花茶は中国特有の茶の種類で、主な生産地は、福建省、浙江省、安徽省、江蘇省などであり、最近になって湖北省、湖南省、四川省、広西チワン族自治区、広東省、貴州省などでも生産されるようになりました。

 最近の花茶は、茶葉も洗練されて、香りとともにお茶も美味しい高級品も出てきました。

【ワンポイント・メモ】

 花茶は、何といっても香りが命です。ガラスの茶器で淹れてもいいのですが、聞香をたのしみながら飲めるように、中国茶の蓋碗を使って飲むことをおすすめします。

棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

 
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