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神話や伝説から生み出されるファンタジー小説
                                                                                       高原=文

  ここ数年、『指輪物語』や『ハリーポッター』などが中国に紹介されて以来、多くの人がファンタジー小説に夢中になっている。しかし長い間、国内で販売されてきたファンタジー小説のほとんどが海外作品で、中国人が書いた、中国テイストの作品はとても少なかった。

  しかし2005年から、こうした状況も変わりつつある。面白くてオリジナルなファンタジー小説がネットで現れ、人気を集めている。そしてそれらの小説が出版されると、売れ行きも驚くほど好調だ。その中でもひときわ人気のあるのが、『誅仙』と『九州』シリーズである。

中国ファンタジーの世界

  『誅仙』は今、中国で最も人気あるファンタジー小説で、2006年4月に出版された『誅仙E』は、初版だけでも20万部を売り上げた。またそれ以前に出版された5部の『誅仙』の販売数も、100万部を超え、この数年ではまれに見る成績である。

 『誅仙』の物語は、青雲山のふもとにある小さな村の人々が、一晩の間に殺戮される所から始まる。幸運なことに、張小凡少年と友人の林驚羽は生き残り、武術界では第一の「青雲門」の弟子になる。そして今まで無名であった張小凡が、人も驚くほどの武芸をマスターし、彼の曲折の冒険が始まっていく。

  この小説は、中国の伝統侠客小説の方法で書かれ、無名の人物が各地で経験と鍛練を積み、最終的に武芸の達人になるというストーリー。ただ普通の侠客小説と違うのは、一人の人間の物語だけではなく、仙人や妖怪も現れ、作者が想像した様々な不思議な魔術が書かれている点だろう。それは、明時代に書かれた『西遊記』とも通じるところがあり、中国ファンタジーの世界が描き出されている。

『山海経』をベースに

  『誅仙』と比べ、『九州』シリーズの小説はまだあまり知られていないが、ファンタジー小説としては成功している。

  『九州』の創作方法はとてもオープンだ。2002年、『九州』創作グループは、ネットでシリーズの舞台とストーリーを公表して、見ている人に小説を創作してもらい、それを参考に『九州』をより豊かな内容に書き上げた。

  『九州』の多くの設定は、中国で最も古い神話的地理書『山海経』を基にしている。

  大海に、古くて荒涼とした大陸があった。その大陸は、殤州、瀚州、寧州、越州など9つの「州」からなり、そこには、「人族」、飛ぶことができる「羽族」、巨人の「夸父族」、地下に住む「河洛族」、水の中に住む「鮫人」、精霊の「魅族」の6つの不思議な種族が暮らしていた。

 古人が書き記したこれらの種族は、現代人が作った、虚構の幻想的な物語と組み合わされ、読む者を、神話と歴史が溶け合ったような古い時代に連れ戻すかのようである。

「ルーツ探し」の試み

  1980年代中期、中国では、「ルーツを探す文学ブーム」が起こった。「文化大革命」の洗礼を受けた青年たちは、その目を中国の歴史や伝統文化に向け、その中から文学創作の「栄養」を吸収した。今のファンタジー小説のブームは、新しい「ルーツを探す旅」だと考えられる。しかし今回の「ルーツ探し」の根は深い。作者たちは、古い神話や伝説の中に「ルーツ探し」を試み、久しくなかった「中国の情調」を浮かび上がらせている。

現在中国のファンタジー小説の代表作
『誅仙』   蕭鼎・著 朝華出版社
『九州 羽伝説』   今何在・著 新世界出版社
『異人傲世録』   明寐・著 中国広播電視出版社
『捜神記』   樹下野狐・著 遼寧教育出版社
『小兵伝奇』   玄雨・著 南海出版公司
『異獣志』   顔歌・著 『青年文学』連載中


 
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