去年、中国を賑わせたテレビ番組『超級女声』では、ボーイッシュな女性アイドルが誕生した。今年はそれとうって変わって、「いい男性」が、各テレビ局のオーディション番組で選ばれている。その誕生は、多くの女性たちの支持によるもので、今やテレビ番組を始めとする時代の流行は、女性の好みによって左右されているようだ。
男性参加のオーディション番組
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『加油、好男児』の最終予選に残った男性たち(新浪ネット) |
2005年に放送された『超級女声』は、中国にいまだかつてないオーディションブームを巻き起こし、優勝した李宇春は、一夜のうちにスターになった。このブームは突然で、とても熱狂的だったため、それに嫌気が差した人も少なくなかった。そのため多くの人は、2006年のオーディション番組は低迷するだろうと考えていた。
すでに、今年度の『超級女声』の幕は切って落とされたが、去年ほどの影響力は見られない。とはいっても全体的に見れば、オーディション番組は視聴者に好評だ。中央テレビ局の『夢想中国(中国で夢を)』、『星光大道(スターへの道)』、上海東方衛星テレビの『加油、好男児(がんばれ、いい男性)』など、その多くが高い視聴率で、その結果は少し予想外なものだった。だがそれは男性の参加という、オーディション番組の新しい変化とも関係しているようだ。
「いい男性」とは?
今年のオーディション番組の中でも注目されている一つが、上海東方衛星テレビの『加油、好男児』だ。オーディションの流れは、ほかの番組と同じで、まず各地の予選で5人の男性を選び、最終的に視聴者の投票によって優勝者を決める。
ただほかのオーディション番組と違うのは、最初の選評をする委員の4人のうち3人が女性で、年齢も20歳、30歳、40歳と分かれている点だ。この3人の女性委員は、参加者がオーディションに残ることができるかどうかの投票権を持ち、男性委員は、ただ女性委員に意見を出すだけで投票権はない。このような構成は、『加油、好男児』が、女性の視点に立った番組だということをよく現している。
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『加油、好男児』番組のログ |
しかしこの番組は、やはり大きな論争を引き起こした。多くの男性は、多数の票を獲得して選ばれた「いい男性」が、男性としての魅力を全く備えていないと考えたからだ。
彼らが考える本当の「いい男性」は、小さなことにこだわらず、男らしく、真面目で、体も丈夫でなければならない。しかし舞台の上に立つ男性は、全く違っている。華奢な体つき、はっきりした目鼻立ち、洗練された立ち振る舞い、特に今年、人気のある向鼎は、容貌が若い女性のようで、日本のジャニーズのタレントにとても似ている。去年の『超級女声』で優勝した、ボーイッシュな李宇春とは全く対照的だ。
かっこいい「スーパー歌姫」も、優しい「いい男性」も、選んでいるのは女性だ。もし、去年の李宇春の誕生が偶然だと言うのならば、今年の『加油、好男児』の論争によって更に、女性の好みが流行を導き始めたことをはっきり示している。
流行を担う女性
約10年前の中国映画は、演技派男優の天下だった。容姿のあまりさえないお笑い芸人の葛優もその一人だが、今では、陸毅、陳坤など、容姿の優れた男性が次々と現れ始めている。
映画の中の女性の立場も変化した。『菊豆』(1990年)の中で鞏俐(コン・リー)は、抑えつけられた女性役を演じていた。しかし、『グリーン・デスティニー』(2000年)の章子怡(チャン・ツィイー)は、自由、勝手気ままに振舞っている。
かつて、中国でよく見られていたミス・ユニバースの番組は、女性の美しいスタイルを楽しむためだったが、今では女性たちがテレビで、「いい男性」を選ぶようになった。
どうして娯楽の好みが女性化しているのかと、多くの人が問う。その言葉を、音楽家の高暁松氏の言葉で答えるなら、「現在は、お金を支払う人がものを言う」時代ということになるのだろう。中国の女性の消費能力は高く、これが流行の一番大きな原因になっている。
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