頤和園の長廊画(22) 写真・文 魯忠民
   
 

『桃花源記』

 陶淵明(365〜427年)は、東晋(317〜420年)時代の文学者で、田園詩歌の創始者。幼いころから、「民を救済する」という大志を抱いていたが、激動する社会の中で、それを実現することは難しかった。何度か官職に就いたが、醜い官界に嫌気が差し、41歳で官職を捨て故郷に戻り、自給自足の隠居生活を送った。

 『桃花源記』の全文はわずか数百字で、虚構で美しく、俗世間から離れた桃源を通して、あらゆる人が安穏に暮らすことができるユートピアを描いている。

 晋代の武陵、今の湖南省武陵山区の近くに住んでいたある漁師が、渓流に沿って漁をしているうちに、偶然、流れの源にたどり着いた。一面の桃の林を通り抜けると、そこには肥沃な土地が目の前に広がり、竹や桑が茂り、男女が田を耕し、鶏や犬の声が間近に聞こえる穏やかな光景があった。

 村人は漁師を見てとても驚いた。彼らの祖先は、秦の時代の戦乱を避け、この地にたどり着いた。それ以来、世の中から隔絶してしまい、すでに王朝が何度変わったのかも知らないという。

 漁師は数日間、親切にもてなされたあと家に戻り、周りの人々に見聞きしたことを話した。それを聞いてみな驚き、名士の劉子驥は、漁師に導かれてその村を探しに行った。しかし、どんなに探しても、浄土のような「桃源郷」は見つからなかった。

 
   
   
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 北京の頤和園は、中国清代の離宮である。庭園にある長廊は、全長728メートル、世界でも最長のギャラリーと言われている。その梁の上には人物や山水、花鳥、建築など各種の彩色画が8000以上ある。なかでも人物画は中国の古典文学、歴史物語、神話伝説などから材を取って、描かれている。本誌では今月号から長廊の彩色画を1つずつ取り上げて、絵画に描かれた物語をご紹介していきたい。

 

   
 

 
本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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