東京支局長 林崇珍=文・写真 |
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千葉県在住の田中典子さん(57歳)の個展「和紙で織りなす京劇の世界」が今年8月7日から6日間、東京・日本橋の「小津和紙ギャラリー」で開催されました。会場には和紙で作られた『楊門女将』や『王昭君』『覇王別姫』などの京劇の主人公たちが並び、訪れた人たちを魅了しました。 田中さんが和紙で人形を作り始めたのは、今から30年前。歌舞伎や能などの日本の伝統芸能を題材にしてきました。 京劇との出会いは、7年前のことでした。ご主人が中国との貿易の仕事をしている商社マンで、田中さんはご主人といっしょに1998年から5年間、中国・上海に住みました。 1999年秋、友人に連れられて、初めて中国の京劇を見て、いっぺんに魅せられてしまいました。「歌舞伎と似ている京劇の主人公たちを、和紙の人形に作ってみたい」と田中さんは思いました。 |
最初に挑戦したのは、上海京劇院のトップスターの史敏さんが演じた『白蛇伝』のヒロインの「白素貞」でした。しかし中国には、シルクで作られた京劇の人形はあっても、和紙で作られたものはありません。 「お手本がないので、最初は苦労しましたよ。これまで作ってきた日本の和紙人形とまるで違う世界に入ってゆく感じでした」と田中さん。京劇の和紙人形のデビュー作が完成するまでに、4カ月もかかったそうです。 凝り性な田中さんは、京劇関係の本を買いあさったり、劇場で京劇を観たり、京劇衣装の収集家も訪ねたりして、研究を重ねました。また、史敏さんとも知り合いになり、楽屋に連れていってもらい、京劇の冠、簪、衣装、化粧などを見せてもらいました。 田中さんが作った京劇の和紙人形は全部で35体。そのうち13体は、今年5月、日本で公演して好評を博した上海京劇院の『楊門女将』のために特別に作った「女将」たちです。 「公演の会場へ持って行き、史敏さんに見せたら、『ここまで……』と驚いた様子でした」と、田中さんはうれしそうでした。 日本は、さまざまな文化を外国から導入し、それを日本独自の文化と融合させて、新しい文化を創造することに秀でていると言われています。京劇という中国の文化が、和紙という日本独特の素材と溶け合って、まったく新しい「京劇和紙人形」になったのです。ここに中日の文化交流の新しい姿を見る思いがしました。 |
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