チャイナスコープ
社会福利から個人負担へ
省エネ促す暖房システム改革
                                     張春侠

暖房設備の検査と修理に力を入れる暖房供給会社の職員

 先ごろ、北京の某病院に勤務する李さんは長い間夢見ていた新居に引っ越した。古い家と違うのは、新しい家は独立した暖房設備が採用され、天然ガスの料金を自分で支払って室内を暖めることである。気候が徐々に寒くなるにつれて、彼女は天然ガスを購入し、冬の暖房に備えることを考え始めた。かつてこのようなことは、まったく彼女が心配する必要のないことだった。

 1949年新中国成立から現在に至るまで、都市住民の冬の間の暖房は一貫してある種の社会福利だった。職員が自分で石炭を使って暖を取らなくてはならないような場合には、職場から毎年一定の補助があった。70年代後期には、都市部では次々に集中暖房システム(地域ごとにボイラーを設置、パイプを通して各部屋をスチームで暖める)が採用され、職場から割り当てられた住居の暖房費は職場が納め、個人が支払う必要はなかった。

 このような状況において、暖房費は個人とは無関係のものであり、省エネルギーにいたっては話題にする人さえいなかった。しかし、これまでの暖房システムの設計は、室内ではまったくコントロールができない不合理なものであった。

 例えば、暑すぎる時には、窓を開けて室温を調節するしかなく、熱量のおよそ7%を浪費していた。特にオフィス、教室などの公共建築は、夜間や放課後、休日など誰もいなくても、普段と同じように暖め続けるため、無駄遣いは非常に深刻である。さらに中国北部地区の300億平方メートルあまりの建築のうち、半分以上は非省エネ建築であるうえ、設備の老朽化によって失われる熱量が、全体の30%を占める地区もある。

 このような弊害に焦点をあわせ、2003年、北京、天津、河北省など、北部の15の省や直轄市が暖房システムの改革をスタートした。2005年には、試験都市は43に達した。今年9月、建設部(省)は2年以内に暖房費制度改革を実施し、都市の低収入層の利益を十分に考慮しつつ、暖房費補助を個人に支給、また使用熱量に応じて支払いをすることによって、暖房の商品化、貨幣化を一歩ずつ実現してゆくことを各地に要求した。

 こうして、現存する建築の建て直しをしないという前提のもとでも、30%の省エネが見込まれている。同時に、関係部門は既存の非省エネ建築の省エネ化及び暖房システムの改良を進めている。

 50年あまりの間、中国の都市暖房制度は一貫して計画経済の色彩が強かった。暖房システム改革の普及は、大々的なエネルギーの節約ができるだけでなく、中国がさらに市場経済に向かって堅固な一歩を踏み出したことを示すものでもある。


 
本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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