1984年の開業という、外資系ホテルとして北京で最も早い時期に誕生し、多くの日本人客に親しまれてきた京倫飯店の日本側総支配人をつとめる。
2006年8月9日、「北京オリンピックまであと2年」のカウントダウンがスタートしたその日、京倫飯店はリニューアルオープンを直前に控えて、最後の仕上げにかかっていた。
「外観はほとんど変わりませんが、内部は完全に新しく生まれ変わります。ホテルで一番大切なのは衛生と安全です。今回のリニューアルでは、この二つの面を改善するために、資金の多くを費やしました」。キッチンやトイレなどの排水・排気設備を新しいものにし、防犯カメラや鍵の取替え、そしてスプリンクラーの設置などを徹底した。
ソフト面でのリニューアルも見逃せない。
「スタッフの満足度を高めれば、お客様の満足度も高まる」という考えのもと、サービスの質を向上させるために、新しい管理方法を採用することに決めた。これまでは、上から下に一方的に指示が下されるというスタイルだった。しかしこれを逆にし、一般のスタッフたちが「こうしたほうがいい」という考えを、上に提案するように変える。
ゲストの要求を直接受けるのは一般のスタッフであるし、自らの提案が生かされたとなれば、スタッフの満足度も高まる。そうすれば、仕事にも熱が入り、サービスの質が向上。おのずとゲストの満足度も高まるというわけだ。「これには、経費も時間もかかりますが、長期的に考えると、企業発展のよい循環を生み出すのです」
北京に赴任したのは1994年のこと。一時、大連に赴任していたものの、10年以上、この大都市の移り変わりを眺めてきた。「この10年で北京はずいぶん変わりました。道路も広くなりましたし、食事や買い物など日常生活の面では、とても住みやすい街になりましたね」
オリンピックを2年後に控え、京倫飯店もすでにその準備を始めている。客室350室をオリンピック組織委員会に提供することも決まっているという。
「オリンピックは中国にとって、とても価値があることです。世界各地からたくさんの人がやってきますし、メディアを通して、美しく現代的な北京をアピールできる。世界に中国のよいイメージを発信できるのです」
急速な変化を遂げる北京で暮らす反動からか、古いものに興味を抱いている。時間があると、北京の骨董市場・潘家園をのぞいたり、天津まで足を延ばしたりする。「特に古いカメラや時計が好きです。中国の歴史や文化が感じられますね」
10年以上暮らしていても、中国への興味はつきない。今後の展望について尋ねると、「北京だけではなく、他の都市も見てみたい」と意欲あふれる答えが返ってきた。
(文=賈秋雅 写真提供=山足司郎)
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