「私のような出稼ぎ労働者が、都市の人と同じようにこんなにたくさんの医療費を請求できるなんて、思いもよりませんでした!」
北京で働く河北省からの出稼ぎ労働者・王瑞さんは興奮気味に語った。少し前、自転車に乗っていた王さんはうっかり電柱にぶつかってしまい、すねを粉砕骨折し、治療費だけで一万元近くかかってしまった。一カ月の収入がわずか千元あまりという王さんにとって、間違いなく莫大な出費である。心配そうな顔をしていた王さん一家だったが、職場が彼にかけていた医療保険で治療費の80%を請求できることがわかった。
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2006年5月16日、中国の労働・社会保障部(省)は正式な文書を公表し、2008年末までに、都市・鎮の会社と雇用関係を結んだ地方からの出稼ぎ労働者を、基本的に医療保険に取り入れるということを提出した。(写真・劉世昭) |
王さんのこうした状況は特例というわけではない。現在、中国における社会保障制度改革は1980年代に始まり、93年以来、中国は企業の養老保険、職員の医療保険、都市や鎮の住宅に関する保険など、一連の社会保障制度改革を推し進めることを加速している。また97年から都市と鎮の住民の最低生活保障制度を打ちたて、こうして基本的な社会保障システムを次第に確立してきた。2004年、社会保障制度は基本的な社会制度の一項目として、『憲法』に書き入れられた。
しかしながら、現在の社会保障制度はなお不健全であり、都市と農村の格差縮小、社会矛盾の解消・緩和、公平な社会の促進といった役割をまだ十分に発揮していない。統計によると、2005年の年末までに、都市と鎮の基本養老保険に参加した人はわずか1億7500万人のみである。全体的に見れば、中国社会保険のカバー率はたったの一割前後であり、農業人口の大部分は社会保障システムの外を徘徊しているということになる。
こうした状況に対し、近年、教育、医療、就業、所得などの問題をめぐる一連の改革措置を相次いで登場させた。今年月に開かれた中国共産党第16期中央委員会第6回全体会議(六中全会)では、2020年までに調和の取れた社会の構築を完成させるための目標と主な課題が提出された。都市と農村の住民を広くカバーする社会保障システムを確立することは、その中の重要な課題の一つとなっている。
社会保障制度は社会の安定の基礎であるとともに、調和の取れた社会構築の重要な課題でもある。社会保障制度の整備を続けてゆくことは、調和の取れた社会の構築の歩みを大いに推進するに違いない。
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