上海映画の名作を東京で上映
                                                             王浩=文   東京テアトル株式会社=写真提供

『ヒマラヤ王子』

 11月から東京で開催されている「中国文化フェスティバル」は魅力的なイベントが目白押しだ。舞踊や音楽、ファッションなどのステージが終了すると、12月16日から22日まで、フェスティバルの中心は映画になる。東京テアトル株式会社、中国文化部、駐日中国大使館が「中国☆上海 映画祭」を共催し、上海で製作された数多くの作品を東京で上映する。映画好き、特に中国映画ファンにとって見逃せないチャンスだ。

 中国の映画界において、上海は特別な地位にある。1920、30年代のモダンシティー上海は、中国映画発祥の地であり、「東洋のハリウッド」とも呼ばれている。当時、上海では欧米の最新作がほぼ同時期に上映されていた。当時、わざわざ船に乗って見に来る日本の映画ファンも少なくなかったという。

 その後、上海は中国映画製作の中心の一つとなり、優秀な映画関係者が大勢集まった。独特なモダン感覚と伝統文化の融合によって生まれた文化的なムードは、上海映画を勢いよく発展させる土壌となり、上海映画に特有の魅力を与えた。

『牧笛』

 今回の映画祭では、『芙蓉鎮』などの名作のほか、中国で公開前の作品も上映。そのうち、『ヒマラヤ王子(喜馬拉雅王子)』は中国の映画界の関係者や映画ファンたちが公開を待ちわびている一本だ。シェークスピアの『ハムレット』を脚色したもので「中国版ハムレット」とも言われている。

 胡雪樺監督は『ハムレット』の構成を大胆に変え、物語の場をチベットに移した。作品では王子の復讐が進むのにともない、神秘的なチベットの情景が映し出される。山や川、宗教、服飾、そして独特なチベット人の生活習慣などが、シェークスピアのこの古い物語により神秘的な色彩を加えている。

 また、原作の残忍な叔父が映画では王子の実の父親に変わっている。劇中、彼はもっとも悲しい人物として描かれている。

『芙蓉鎮』

 「中国の多くの監督は『ハムレット』から大きな影響を受けています。私もそのうちの一人で、特別な感情を持っているといえます。私たちは原作のオリジナルのセリフの多くを尊重し、映画に使いました。結末の部分を変えたのは、犠牲的精神への賞賛を表現したかったからです」と胡監督は語る。

 『ヒマラヤ王子』のキャストはすべてチベット族の俳優だ。セリフもチベット語。特に注目したいのは、主人公の王子役を務めた蒲巴甲さん。中国で人気のオーディション番組『加油、好男児(頑張れイイ男)』の今年の優勝者である。視聴者による携帯メールの投票でチャンピオンに選ばれた蒲巴甲さんは今、中国で大人気。『ヒマラヤ王子』は彼の初出演作となるので、注目を浴びている。

 このほか、今回上映される『牧笛』『大暴れ孫悟空(大閙天宮)』『おたまじゃくしがお母さんを探す(小蝌蚪找媽媽)』などは、上海美術映画製作所が作ったアニメ映画の名作で、文化祭の最大の見どころとされている。

 『牧笛』は日本の映画ファンにもおなじみの映画だ。中国の水墨画の芸術スタイルを濃縮したもので、中国映画史上最高の作品だと言える。『大暴れ孫悟空』など他の作品も、世界で高い評判を受けている。「アニメ王国」の日本で、中国のアニメ映画を観賞するのもなかなかオツではないだろうか。

『自娯自楽』

 また、『自娯自楽』や『第601個電話』も秀作だ。さらに、映画祭の開幕式には『芙蓉鎮』の謝晋監督と蒲巴甲さんが舞台挨拶する。

 映画は国や民族の重要な文化媒体であり、その国の社会や文化を理解する重要な手段の一つだ。ここ数年、中日間の映画業界の交流は頻繁で、各種の映画祭も次々に開かれている。

 今回の映画祭を主催した東京テアトルは、2005年に上海電影集団と協力して上海で「日本映画祭」を開催した。その映画祭には上海の映画ファンが殺到した。今度は逆に、上海映画が東京に上陸。上海の文化を味わう機会を日本の人々に提供する。

 (開催地:テアトルタイムズスクエア 東京都渋谷区千駄ヶ谷5―24―5 タカシマヤタイムズスクエア12階)


 
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